## バタイユの「呪われた部分」の翻訳
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翻訳の問題点
バタイユの主著『呪われた部分』は、その難解な文体と内容のために、翻訳が非常に困難な作品として知られています。 具体的には、以下のような問題点が挙げられます。
* **多義的な語彙の選択**: バタイユは、同一の単語を文脈によって異なる意味で用いることが多く、辞書的な意味に囚らわれない翻訳が求められます。例として、「dépense(消費)」は、単なる経済活動だけでなく、祭りやエロスといった、より広範なエネルギーの散逸をも指し示します。
* **複雑な構文の解釈**: バタイユの文章は、非常に長く複雑な構造を持つことが多く、正確に意味を捉え、日本語として自然な文章に置き換えることは容易ではありません。
* **専門用語の扱い**: バタイユは、哲学、人類学、経済学、宗教など、多岐にわたる分野の用語を駆使しており、それぞれの分野における正確な理解と、日本語での適切な表現が求められます。
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翻訳の具体例
これらの問題点を踏まえ、具体的な翻訳の例を挙げながら、その解釈と表現について考察していきます。
* 例1:「la part maudite」
* 一般的な翻訳:「呪われた部分」
* 解釈: 「la part」は「部分」、「몫」、「役割」など複数の解釈が可能であり、「maudite」も「呪われた」だけでなく、「忌まわしい」、「排除された」といった意味合いを含みます。文脈によっては、「呪われた部分」以外にも、「排除された Anteil 」といった翻訳も考えられます。
* 例2: 「dépense improductive 」
* 一般的な翻訳:「非生産的消費」
* 解釈: 「dépense」は、前述の通り、経済活動に限らないエネルギーの散逸を意味し、「improductive」も、単なる経済的な非効率性ではなく、既存の秩序や価値観から逸脱した行為を指します。文脈によっては、「非生産的な支出」、「浪費」といった翻訳も考えられ、「消費」という言葉自体が持つ経済的な意味合いを考慮する必要もあります。
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翻訳の課題
上記のような問題点から、『呪われた部分』の翻訳には、単なる逐語訳を超えた、バタイユの思想に対する深い理解と、それを日本語で表現する高い能力が求められます。
今後の課題としては、バタイユの思想をより深く理解した上で、既存の翻訳の問題点を克服し、より原文に忠実かつ、日本語としても読みやすい翻訳を生み出すことが挙げられます。