バジョットのイギリス憲政論の評価
バジョットのイギリス憲政論の概要
ウォルター・バジョットの『イギリス憲政論』（The English Constitution）は、1867年に出版されたイギリスの政治制度に関する古典的な著作です。本書は、イギリスの政治体制を「dignified parts（尊厳的部分）」と「efficient parts（効率的部分）」に分け、それぞれが持つ役割を分析しました。
「尊厳的部分」と「効率的部分」
バジョットは、イギリスの政治体制を支える要素として、国民感情に訴えかける「尊厳的部分」と、実際の政治運営を担う「効率的部分」を挙げました。
* **尊厳的部分:** 国王や貴族院のように、歴史と伝統に裏打ちされた権威を持ち、国民の尊敬と忠誠心を集める役割を担います。
* **効率的部分:** 選挙で選ばれた庶民院や内閣のように、実際の政治的意思決定を行い、政策を実行する役割を担います。
バジョットは、イギリスの政治体制が安定して機能しているのは、この二つの部分がバランスよく機能しているためだと論じました。
本書の評価
『イギリス憲政論』は、出版当時から大きな反響を呼び、イギリスの政治制度に関する重要な著作として、現在に至るまで高く評価されています。
* **イギリス政治の現実を描写:** 当時のイギリス政治の仕組みを、理想論ではなく現実的に描き出した点が高く評価されています。
* **平易な文章と鋭い洞察力:** 専門的な知識がない読者にも理解しやすい平易な文章で書かれており、バジョットの鋭い洞察力と相まって、多くの人々に影響を与えました。
* **立憲君主制の重要性を主張:** 本書は、イギリスにおける立憲君主制の重要性を説いたものとしても知られています。
批判的な評価
一方で、『イギリス憲政論』に対する批判もあります。
* **貴族中心主義:** 貴族出身のバジョットの視点が強く反映されており、貴族の役割を過大評価しているという指摘があります。
* **時代遅れな部分:** 本書の内容は、19世紀後半のイギリス政治を反映したものであり、現代のイギリス政治には当てはまらない部分もあります。
結論
『イギリス憲政論』は、出版から150年以上経った現在でも、イギリスの政治制度を理解する上で重要な著作として位置付けられています。