バクーニンの神と国家
バクーニンの思想における「神と国家」の位置づけ
「神と国家」は、ミハイル・バクーニン (1814-1876) によって書かれた未完の著作です。バクーニンは、国家と宗教の両方を、人間の自由と幸福に対する抑圧的な力と見なした、影響力のあるアナキスト思想家でした。
「神と国家」の内容と主題
この作品は、バクーニンのアナキズム思想、特に国家と組織化された宗教に対する彼の批判を理解するための重要なテキストです。彼は、これらの制度が本質的に権威主義的であり、個人の自由と自治を抑圧すると主張しています。
バクーニンによれば、「神」の概念は、人間の自由に対する究極の制限です。神は全能で全知として描かれており、人間の行動に絶対的な道徳的基準を設定し、疑問を挟む余地を与えません。この絶対的な権威は、バクーニンが「宗教的搾取」と呼ぶものを生み出し、そこでは司祭や教会などの宗教的権威者が、神の代理人として行動することで、人々を支配し、搾取します。
同様に、国家もまた、バクーニンにとって、個人の自由を侵害する抑圧的な力です。彼は、国家は支配階級の利益を守るために存在し、法律、警察、軍隊を通じて、人々を服従させ、搾取していると主張します。バクーニンは、国家を必要悪とみなす他の政治哲学とは異なり、国家は本質的に有害であり、完全に廃止されるべきだと考えていました。
「神と国家」の未完成性と影響
「神と国家」はバクーニンの死により未完成のままでしたが、彼の思想を理解するための重要な資料であり続けています。彼の国家と宗教に対する痛烈な批判は、後のアナキストや自由主義の思想家に影響を与え、権威主義に対する根強い抵抗の源となっています。