ハーバーマス後期資本主義における正当化の諸問題の技法

ハーバーマスは、後期資本主義社会における正当化の危機を克服するために、コミュニケーション論を展開しました。彼は、社会秩序の維持には、単なる権力や伝統による支配ではなく、コミュニケーションを通じて正当性が確保される必要があると主張します。

ハーバーマスは、「理想的談話状況」という概念を提唱しました。これは、あらゆる形態の権力や強制から解放され、参加者が自由に意見を表明し、対等な立場で議論できる状況を指します。

ハーバーマスは、コミュニケーションを単なる情報伝達ではなく、「コミュニケーション的行為」と捉えます。コミュニケーション的行為は、相互理解と合意形成を目指し、妥当性請求を介して行われます。

妥当性請求とは、発言者が自身の主張に対して、それが真であること、正しいこと、誠実であること、理解可能であることを表明し、聞き手の同意を求める行為です。

ハーバーマスは、社会を「システム」と「生活世界」の二つに分けて分析します。システムは、経済や政治といった、効率性や合理性を重視する領域です。一方、生活世界は、文化やコミュニケーション、人間関係といった、価値や意味が共有される領域です。

後期資本主義社会では、システムが肥大化し、生活世界を「植民地化」しているとハーバーマスは批判します。システムの論理が、生活世界の領域にまで浸透し、コミュニケーションを歪ませていると彼は主張します。