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ハーバーマス後期資本主義における正当化の諸問題と時間

ハーバーマス後期資本主義における正当化の諸問題と時間

後期資本主義におけるシステムの危機と時間

ハーバーマスは、後期資本主義を、「高度に発達した産業社会」と「福祉国家」という2つの側面を持つシステムとして捉えています。このシステムは、経済成長と社会統合という機能を維持することで、自己正当化を試みてきました。

しかし、ハーバーマスは、このシステムが内包する危機に注目します。経済成長は、資源の枯渇や環境破壊といった限界に直面し、社会統合は、個人の自由や自律性を侵害する可能性を孕んでいます。

この危機は、時間的な側面からも捉えることができます。システムは、過去の経済成長や社会統合の成功体験に基づいて、未来の安定を約束することで正当化を試みます。しかし、システムの危機は、この未来への約束が不確実なものとなりつつあることを示しています。

コミュニケーション的行為と時間

ハーバーマスは、システムの危機を克服するために、「コミュニケーション的行為」の重要性を強調します。コミュニケーション的行為とは、参加者が対等な立場で、理性的な議論を通じて、共通の理解や合意形成を目指すコミュニケーションです。

コミュニケーション的行為は、時間的な側面においても重要な役割を果たします。過去の経験や伝統を批判的に吟味し、未来の可能性を創造的に構想することで、現在における行動の指針を提供します。

しかし、コミュニケーション的行為は、システムによって時間的に圧縮される傾向があります。システムは、効率性や利益を優先するため、時間のかかるコミュニケーションを避け、短期的な解決策を押し付けようとします。

正当化の新たな地平と時間

ハーバーマスは、システムの危機を克服し、正当化の新たな地平を切り開くためには、コミュニケーション的行為のための時間と空間を確保することが重要だと考えます。

そのためには、システムの論理を超えた、市民社会における自発的な議論や運動が不可欠となります。市民社会は、システムの外部から批判的な視点を提供し、新たな価値観や規範を形成する役割を担います。

このプロセスは、時間をかけて、徐々に進展していくものです。重要なのは、短期的な成果を求めるのではなく、未来世代に開かれた社会を目指して、根気強くコミュニケーションを継続していくことです。

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