## ハロッドの動態経済学序説の批評
### ハロッド・モデルへの批判
ハロッドの動態経済学序説は、経済成長の分析に革新的な視点を提供しましたが、発表当初から様々な批判にさらされてきました。主な批判点は以下の通りです。
* ### 不安定性問題
ハロッド・モデルは、均衡成長経路からの逸脱が増幅される「ナイフエッジ」的な不安定性を示唆しています。現実の経済において、常に完全雇用が達成されているわけではありませんが、同時にハロッド・モデルが示唆するほどの激しい景気循環も観察されていません。この乖離は、モデルが現実の経済メカニズムを十分に反映していない可能性を示唆しています。
* ### パラメーターの硬直性
ハロッド・モデルは、資本係数や貯蓄率などのパラメーターを固定と仮定しています。しかし現実には、技術革新や政策変更などによってこれらのパラメーターは変化し得ます。パラメーターの硬直性は、モデルの現実への適用可能性を制約する要因となっています。
* ### 価格調整の無視
ハロッド・モデルは、ケインズ経済学の影響を強く受けており、価格の硬直性を前提としています。しかし、長期的には価格調整メカニズムが働き、需給の不均衡は解消される可能性があります。価格調整の無視は、モデルの長期的な分析における限界となっています。
### 批判への反論と発展
上記の批判に対し、ハロッド自身も後年の著作でモデルの修正を試みています。また、ソローやトビンなど、多くの経済学者がハロッド・モデルを発展させ、より現実的な経済モデルの構築を目指しました。例えば、ソロー成長モデルは、技術進歩を導入することでハロッド・モデルの不安定性問題を克服しようと試みました。