# ハラリのサピエンス全史を深く理解するための背景知識
人類の進化
ハラリのサピエンス全史は、ホモ・サピエンスという種の誕生から現代社会までを壮大なスケールで描く歴史書です。その内容を深く理解するためには、まず人類の進化に関する基本的な知識が必要です。
人類は霊長類に属し、チンパンジーやゴリラなどの類人猿と共通の祖先から進化しました。約７００万年前に人類の祖先はチンパンジーの祖先と分岐し、その後様々な人類種が誕生しました。アウストラロピテクス、ホモ・エレクトゥス、ホモ・ネアンデルターレンシスなど、多くの種が生まれては絶滅していきましたが、最終的に生き残ったのはホモ・サピエンス、つまり私たち現代人だけです。
サピエンス全史では、ホモ・サピエンスが他の種と比べて何が優れていたのか、なぜ唯一生き残ることができたのかが重要なテーマとして扱われています。その鍵となるのが、「認知革命」と呼ばれるものです。約７万年前に起こったとされる認知革命により、サピエンスは高度な言語能力を獲得し、抽象的な思考や複雑なコミュニケーションが可能になりました。これによって、大規模な集団での協力や、神話や物語といった虚構の共有が可能となり、他の種を凌駕する適応力を獲得したと考えられています。
農業革命
約１万年前に始まった農業革命は、人類史における大きな転換点でした。それまで狩猟採集生活を送っていた人類は、植物を栽培し、動物を家畜化することで、安定した食料供給を確保できるようになりました。農業革命は人口増加を促し、定住生活を定着させ、村や都市の形成につながりました。
しかし、サピエンス全史では、農業革命が必ずしも人類にとって幸福な出来事ではなかったという視点が提示されています。農業は狩猟採集よりも重労働であり、食料源が限られることで飢饉のリスクも高まりました。また、定住生活は伝染病の蔓延を招き、社会階層の形成による格差も生み出しました。ハラリは、農業革命を「歴史上最大の詐欺」と表現し、人類が自ら進んで労働と苦役の道を選んだ可能性を指摘しています。
貨幣、帝国、宗教
農業革命以降、人類社会はますます複雑化し、大規模化していきます。サピエンス全史では、貨幣、帝国、宗教といった概念が、人類社会を形作る上で重要な役割を果たしてきたことが解説されています。
貨幣は、異なる価値観を持つ人々を結びつけ、大規模な交易を可能にするシステムです。帝国は、多様な民族や文化を統合し、広大な地域を支配する政治体制です。宗教は、共通の価値観や規範を提供し、社会の秩序を維持する役割を果たしてきました。
ハラリは、これらの概念を「虚構」と呼びます。虚構とは、客観的な実体を持たないにもかかわらず、人々が共有することで現実世界に影響を与える概念です。貨幣の価値、帝国の正当性、宗教の教えなどは、全て人々の共通認識によって成り立っています。ハラリは、サピエンスが虚構を信じる能力こそが、大規模な社会を構築し、他の種を凌駕する繁栄を築いた要因であると主張しています。
科学革命
約５００年前に始まった科学革命は、人類史における新たな章を開きました。科学革命は、観察、実験、数学的分析に基づいた新たな知識体系を生み出し、それまでの宗教や伝統的な権威を揺るがしました。
科学革命は、ヨーロッパにおける大航海時代や産業革命を促し、資本主義の台頭を招きました。そして、西洋諸国による世界各地の植民地化や、地球規模での環境破壊など、人類史に大きな影響を与えました。
サピエンス全史では、科学革命が人類に未曾有の力を与えた一方で、新たな倫理的な課題も突きつけていることが指摘されています。遺伝子工学、人工知能、ナノテクノロジーといった科学技術は、人類の未来を大きく変える可能性を秘めていますが、同時に大きなリスクも孕んでいます。ハラリは、科学革命によって獲得した力をどのように使うべきか、人類は新たな知恵を必要としていると警鐘を鳴らしています。
これらの背景知識を踏まえることで、サピエンス全史で描かれている人類の歴史をより深く理解し、ハラリの主張する問題意識を共有することができます。
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読書意欲が高いうちに読むと理解度が高まります。