ハイデガーの存在と時間から得られるもの
存在とは何かについての問い直し
「存在と時間」は、西洋哲学の伝統的な問いである「存在とは何か」を、根本から問い直すことを試みた書物です。ハイデガーは、従来の哲学が「存在者」についての考察に終始し、「存在」そのものを問うことを疎かにしてきたと批判します。彼は、存在を「存在者ではない何か」として捉え直し、それを明らかにするために、人間の存在様式である「現存在」(Dasein)の分析を行います。
日常性と非本来性への批判
ハイデガーは、現存在が「世間」と呼ばれる、平均化され、匿名化された世界に埋没し、「誰でもない」ような状態で生きていることを指摘します。彼はこれを「非本来性」と呼び、批判的に考察します。ハイデガーによれば、私たちは日常的な事柄に追われ、自分自身の「死」の可能性に目を背けることで、非本来的な生を生きています。
本来的な生き方への導き
「存在と時間」は、単に非本来的な生き方を批判するだけでなく、そこから脱却し、「本来的な生き方」へと至る道を示唆しています。ハイデガーは、自分自身の「死」の可能性と向き合い、「不安」を経験することによって、私たちは初めて「自分自身であること」を自覚し、本来的な生き方へと開かれると主張します。
時間についての新たな解釈
ハイデガーは、「存在」の解明のために、「時間」の問題が不可欠であると考えました。彼は、従来の哲学が時間を客観的で均質な「流れ」として捉えてきたことを批判し、時間の本質は、むしろ「未来」から「現在」を経て「過去」へと向かう「時間化」という構造にあると主張します。そして、この時間化こそが、現存在が「歴史的」であり、常に「未来の可能性」に向かって生きていることを可能にしていると説きます。
Amazonで詳細を見る
読書意欲が高いうちに読むと理解度が高まります。