## ノージックのアナーキー・国家・ユートピアの世界
最小国家
ノージックは、個人の権利を最大限に尊重する最小国家の存在を正当化しようとします。彼の主張によれば、国家は、個人の権利を侵害することなく、暴力の行使を独占する唯一の主体となることができます。
自然状態
ノージックは、国家が存在しない「自然状態」を仮定します。この状態では、個人は自然権を有しており、その中には、自己所有権、生命権、自由権などが含まれます。しかし、自然状態では、他者の権利侵害から身を守るための効果的な手段がありません。
保護協会の登場
自然状態の不安定さを解消するために、個人は自発的に「保護協会」を形成します。保護協会は、会員の権利保護を目的とし、その対価として会費を徴収します。競争を通じて、より効率的で、より広範な保護を提供できる保護協会が台頭していきます。
支配的な保護協会と最小国家
最終的に、最も強力な保護協会が他の保護協会を圧倒し、「支配的な保護協会」となります。支配的な保護協会は、事実上の国家としての機能を果たしますが、倫理的な問題が残ります。ノージックは、支配的な保護協会が、正当な手続きを経て最小国家へと進化することを主張します。
正当な国家の条件
ノージックは、正当な国家は、以下の条件を満たさなければならないと主張します。
* 個人の権利を侵害しないこと
* 暴力の行使を独占すること
* 契約の履行を保証すること
* 詐欺や窃盗を防止すること
ユートピア
ノージックは、最小国家の存在する世界をユートピアとは考えていません。彼は、個人の自由を最大限に尊重する社会では、多様なライフスタイルや共同体が共存すると考えます。人々は、自らの価値観に基づいて、自由に共同体を形成し、独自のルールを設定することができます。
分配の正義
ノージックは、結果の平等を重視する分配の正義を批判し、手続きの正義を重視します。彼は、個人が正当な手段で財産を取得し、それを自由に交換する権利を擁護します。彼が考える正当な取得には、以下の3つの原則があります。
* **取得の正義**: 未所有のものを正当な手続きで最初に取得すること
* **移転の正義**: 正当に取得された財産は、自由な交換や贈与によってのみ移動すること
* **矯正の正義**: 過去の不正によって生じた不平等は、是正されるべきであること
これらの要素が、ノージックの「アナーキー・国家・ユートピア」で展開される主要な概念です。