## ノイマンの「大衆国家と独裁」の翻訳について
### 翻訳の背景
1941年に出版されたカール・シュミットの『国家構造の法的及び社会学的諸形態』への応答として構想されたノイマンの主著『Behemoth: The Structure and Practice of National Socialism, 1933–1944』は、ナチス・ドイツの支配構造を分析した画期的な研究でした。 ノイマンはこの著作で、ナチス体制を従来の政治理論の枠組みでは捉えきれない、新しいタイプの支配形態として「非国家」(Behemoth)と定義しました。
### 翻訳の変遷
『Behemoth』は1942年にアメリカで出版され、大きな反響を呼びました。その後、世界各国で翻訳されましたが、日本語版の出版は比較的遅く、1963年にようやく実現しました。これは、戦後日本の学問界におけるドイツ政治思想研究の遅れや、ノイマンの著作の難解さが影響していると考えられています。
### 翻訳の題名
日本語版の題名は『大衆国家と独裁』とされており、原題である『Behemoth: The Structure and Practice of National Socialism, 1933–1944』とは大きく異なっています。これは、当時の日本の読者にとってより馴染みやすく、また、ノイマンの主張を端的に表すものとして選ばれたと考えられます。
### 翻訳の問題点
日本語版『大衆国家と独裁』は、ノイマンの複雑な議論をできる限り正確に伝えるべく、訳者による多大な努力が払われています。 しかしながら、原著出版から時間が経過していること、そしてドイツ語と日本語という言語の構造の違いなどから、いくつかの問題点も指摘されています。 例えば、ノイマンの用いる専門用語の訳語が統一されていない点や、原文のニュアンスが十分に伝わっていない箇所などが挙げられます。