## ドッブの価値と分配の諸理論の批評
ドッブの「価値と分配の諸理論」に対する主な批判点
モーリス・ドッブの著書「価値と分配の諸理論:経済思想史における一研究」は、古典派経済学からマルクス経済学、そして20世紀初頭の経済学までを辿る、野心的で影響力のある著作です。出版以来、ドップのマルクス経済学への共感的な視点は、多くの学者から称賛と批判の両方を受けてきました。
ドッブのマルクス経済学解釈に対する批判
ドップは、マルクスの価値と搾取の理論を擁護し、それを資本主義の搾取的な性質を明らかにする強力なツールと見なしました。しかし、彼のマルクス解釈は、いくつかの点で批判を受けてきました。
* **労働価値説への固執:** ドップは、マルクスの価値の議論の根底にある労働価値説を強く擁護しました。しかし、多くの批評家は、労働価値説は循環論法に陥りやすく、価格や利潤などの経済現象を十分に説明できないと主張しています。
* **生産関係への過度の重点:** ドッブは、生産関係、特に資本家と労働者の間の階級関係を強調しました。批評家は、この視点は、技術革新、消費者選好、国際貿易など、他の重要な経済的要因を十分に考慮していないと主張しています。
* **静的分析への偏り:** ドッブの分析は、しばしば資本主義の静的な側面、特に搾取関係に焦点を当てていました。批評家は、このアプローチでは、技術進歩や経済成長などの動的な側面を含む資本主義の複雑さを十分に捉えきれていないと主張しています。
ドッブの他の経済学派への批判
ドップは、新古典派経済学などの他の経済学派に対しても批判的であり、それらを資本主義の不平等と矛盾を曖昧にするものと見なしていました。しかし、彼の批判は、常に十分な根拠に基づいているわけではありませんでした。
* **新古典派経済学への理解不足:** 批評家は、ドップが新古典派経済学の複雑さを十分に理解しておらず、その分析を過度に単純化していると主張しています。特に、限界効用理論や一般均衡理論に対する彼の批判は、しばしば誤解に基づいているとされています。
* **イデオロギー的偏見:** ドップの分析は、明らかにマルクス主義の視点から書かれており、批評家はこれが彼の客観性を損なっていると主張しています。特に、彼の新古典派経済学への批判は、しばしばイデオロギー的な反対意見に基づいており、経済理論そのものの厳密な評価に基づいていないという指摘があります。
これらの批判点は、「価値と分配の諸理論」に対する一般的な学術的評価の一部に過ぎません。ドップの著作は、経済思想の歴史と現代の経済問題との関連性についての重要な洞察を提供していますが、その主張のいくつかは、綿密な検討と批判的な分析が必要です。