ドストエフスキーの賭博者の原点
ドストエフスキー自身の賭博体験
ドストエフスキーは、自身もルーレットにのめり込む激しいギャンブル依存症に苦しんでいました。「賭博者」は、彼が実際にルーレットに熱中していた1860年代、特に1866年に、ドイツのヴィースバーデンとバーデン・バーデンで経験したことが色濃く反映されています。彼はその体験を、後年友人に宛てた手紙の中でも赤裸々に告白しています。
出版社との契約と経済的困窮
ドストエフスキーは当時、出版社との契約に追い詰められていました。彼は前作「罪と罰」の執筆が遅延し、新作を期限内に納品しなければ、著作権を出版社に奪われるという厳しい状況にありました。この切迫した状況が、「賭博者」の執筆を急がせる要因となり、作品全体に焦燥感が漂う一因となっています。
アンナ・スニートキナとの出会い
「賭博者」の執筆中に、ドストエフスキーは速記者であるアンナ・スニートキナと出会います。彼女は彼の窮状を救うため、献身的に支え、「賭博者」の口述筆記を請け負いました。アンナとの出会いは、ドストエフスキーの人生に大きな転機をもたらし、後の結婚へと繋がっていきます。
ルーレットへの心理描写
「賭博者」では、ルーレットにのめり込む主人公の心理描写が克明に描かれています。一攫千金を夢見て熱狂する一方、負けが込むにつれて冷静さを失い、破滅へと突き進んでいく様は、ドストエフスキー自身の経験に基づいたリアリティを持っています。