ドストエフスキーの貧しき人びとに影響を与えた本
ニコライ・ゴーゴリの『外套』の影響
ドストエフスキーの『貧しき人びと』は、ゴーゴリの『外套』の影響を強く受けています。 『外套』は、貧しい下級役人アカーキー・アカーキエヴィチ・バシュマチキンを主人公にした物語で、彼は新しい外套を手に入れることに執念を燃やし、それを手に入れた喜びも束の間、盗まれてしまい絶望の淵に突き落とされます。『貧しき人びと』と『外套』は、どちらもペテルブルクの貧しい人々の生活を描いた作品であり、そのリアルで哀愁漂う描写は共通しています。
社会的弱者への共感
両作品において、ゴーゴリとドストエフスキーは社会から見捨てられた貧しい人々に対する深い共感を示しています。アカーキーとマカール・デーヴシュキンは、どちらも社会の底辺で懸命に生きようとする、小さく取るに足りない存在として描かれています。しかし、作者たちは彼らのささやかな喜びや悲しみに寄り添い、人間としての尊厳を描写することで、読者に彼らへの共感と社会への疑問を投げかけています。
ペテルブルクの陰鬱な描写
『外套』と『貧しき人びと』は、どちらも当時のロシアの首都ペテルブルクの陰鬱な側面を描いている点で共通しています。冷たく湿った気候、薄暗く汚い街並み、そしてそこで息苦しい生活を送る貧しい人々の姿は、リアリズムの手法を用いて生々しく描かれています。
手紙形式による内面描写
『貧しき人びと』は、主人公マカールと遠縁の女性ヴァルヴァラが手紙を交換し合うという形式で物語が進んでいきます。これは『外套』には見られない、『貧しき人びと』独自の特徴です。しかし、手紙という形式を用いることで、登場人物の心の内側をより深く掘り下げ、彼らの置かれた状況や心情を読者に訴えかけるという点において、『外套』の影響が見られます。