ドストエフスキーの地下室の手記の関連著作
ジャン＝ジャック・ルソー 『告白』 (1782年)
ルソーの自伝的作品である『告白』は、『地下室の手記』の語り手のように、人間の心理の暗い側面を赤裸々に描き出した作品として知られています。ルソーは自らの罪や過ち、内面の葛藤をありのままに告白することで、人間存在の真実を追求しようと試みました。この作品は、理性よりも感情や感覚を重視するロマン主義の先駆的な作品と評価されており、『地下室の手記』における語り手の自己中心的で矛盾に満ちた心理描写にも影響を与えたと考えられています。
ニコライ・ゴーゴリ 『外套』 (1842年)
ゴーゴリの『外套』は、貧しい下級官吏アカーキー・アカーキエヴィチの物語を通して、当時のロシア社会における官僚主義や人間疎外を描いた作品です。主人公アカーキーは、新しい外套を手に入れることを唯一の希望に生きていますが、その外套を盗まれたことをきっかけに、絶望の淵に突き落とされます。彼の悲惨な運命は、『地下室の手記』の語り手のように、社会から疎外され、自分の殻に閉じこもって生きる人間の姿を象徴的に表しています。
オノレ・ド・バルザック 『ゴリオ爺さん』 (1835年)
バルザックの『ゴリオ爺さん』は、娘たちに財産を貢ぎ尽くし、貧困の中で孤独な死を迎える老人の姿を描いた作品です。ゴリオ爺さんの悲劇は、当時のフランス社会における金銭欲や家族の崩壊を象徴するものであり、『地下室の手記』の語り手を取り巻く、退廃的で不条理な世界観とも共通する部分が見られます。
ソーレン・キェルケゴール 『あれか これか』 (1843年)
キェルケゴールの『あれか これか』は、人生における二つの異なる生き方、「美的段階」と「倫理的段階」を対比させ、人間の自由と選択の問題を深く掘り下げた哲学書です。『地下室の手記』の語り手は、「美的段階」と「倫理的段階」の狭間で葛藤する人間の典型的な例として捉えることができます。彼は理性的な行動よりも、自分の感情や欲望に忠実であろうとしますが、その結果として更なる苦悩に陥っていくことになります。