ドゥオーキンの権利論の選択
ドゥオーキンの権利論における「選択」
ロナルド・ドゥオーキンは、現代において最も影響力のある法哲学者の一人であり、その権利論は法哲学の中心的なテーマとなっています。ドゥオーキンの権利論において、「選択」は重要な役割を果たしています。彼の議論は、主に以下の3つの側面において「選択」と深く関わっています。
1. 権利の根拠としての選択
ドゥオーキンは、個人の権利を「トランプ」にたとえ、権利は他のあらゆる考慮事項に優先すると主張しました。これは、個人の権利が、社会全体の利益や功利のために犠牲にされてはならないことを意味します。
彼は、功利主義のような結果主義的な理論を批判し、個人の権利を軽視していると主張しました。ドゥオーキンにとって、個人の権利は、単なる政策的な選択肢ではなく、人間の尊厳と自律性を保障するための不可欠な要素です。
ドゥオーキンは、権利の根拠を「人間の平等な道徳的価値」に見出し、個人がそれぞれ尊重に値する存在であることを強調しました。この平等な道徳的価値から、個人の権利が導き出され、これらの権利は、社会全体の利益のために犠牲にすることができない「切り札」として機能すると彼は主張しました。
2. 解釈における選択
ドゥオーキンは、法の解釈においても「選択」が重要な役割を果たすと考えました。彼は、法の解釈は単なる条文の解釈に留まらず、原則と政策を考慮した上で、最も説得力のある解釈を選択するプロセスであると主張しました。
彼は、裁判官が過去の判例や法原則を解釈する際に、「権利としての要請」という概念を用いて、個人の権利を最大限に尊重する解釈を選択すべきだと主張しました。ドゥオーキンにとって、法の解釈とは、過去の判例や法原則を単に適用するのではなく、それらを再構成し、新たな状況に適応させる創造的なプロセスです。
3. 政治的決定における選択
ドゥオーキンは、政治的な決定においても、個人の権利が重要な役割を果たすべきだと考えました。彼は、民主主義は単なる多数決ではなく、個人の権利を尊重した上で、公正な手続きを通じて政治的な決定を行うプロセスであると主張しました。
ドゥオーキンは、政治的な決定においても、個人の権利が「切り札」として機能し、特定の政策や法律が、たとえ多数派の利益に合致したとしても、個人の基本的な権利を侵害する場合には、正当化されないことを強調しました。
これらの3つの側面から、ドゥオーキンの権利論において、「選択」が重要な役割を果たしていることがわかります。個人の権利の根拠、法の解釈、政治的な決定において、「選択」は、人間の尊厳と自律性を保障するための不可欠な要素となっています。