## トルストイの復活の周辺
執筆背景
「復活」は、レオ・トルストイが1889年から1899年にかけて執筆した長編小説です。
執筆のきっかけとなったのは、友人の裁判官A.F.コニから聞いた実話でした。貴族の青年が陪審員として参加した裁判で、かつて自分が誘惑した女性が被告人として立っていることに気づき、自責の念に駆られるという話でした。トルストイはこの話を聞き、人間の罪と贖罪、そして復活というテーマを深く掘り下げていきました。
社会背景とテーマ
「復活」が書かれた19世紀末のロシアは、農奴解放後の社会不安や貧富の差の拡大、資本主義の台頭など、大きな変革期にありました。
トルストイは、そうした社会状況を背景に、貴族社会の腐敗や司法制度の矛盾、教会の権威主義などを批判的に描いています。
登場人物と象徴性
主人公ネフリュードフ公爵は、若い頃に犯した過ちを悔い改め、マスローヴァという女性を通して自己犠牲と愛の道を歩み始めます。
マスローヴァは、社会的に弱い立場に置かれながらも、苦難の中でも人間性を失わない女性です。彼女は、当時のロシア社会における犠牲者の象徴とも言えます。
宗教的影響
「復活」には、トルストイ自身の宗教的思想が色濃く反映されています。
トルストイは、当時のロシア正教会の教義や儀式を批判し、福音書に立ち返った原点的なキリスト教を追求しました。作中では、愛と赦し、自己犠牲といったキリスト教の教えが重要なテーマとなっています。
出版と反響
「復活」は、ロシア国内外で大きな反響を呼びました。
トルストイの社会批判や宗教的思想は、多くの読者に影響を与え、当時のロシア社会に一石を投じることになりました。しかし、その一方で、ロシア正教会からは激しい批判を受け、1901年にはトルストイは破門されてしまいます。