トルストイのセヴァストーポリ物語の企画書
執筆の背景
1854 年に勃発したクリミア戦争において、露土戦争以来となる大規模な国際戦にロシア帝国は巻き込まれました。
露軍は緒戦こそ優勢に戦いを進めますが、1854 年 9 月にイギリス・フランス連合軍がクリミア半島に上陸すると戦況は一変します。
黒海艦隊の根拠地セヴァストーポリ要塞の陥落はロシア帝国の敗北を意味し、兵士、市民を問わず多くの人々が祖国防衛のためにセヴァストーポリに集結しつつありました。
執筆の目的
未だかつて経験したことのない近代戦のさなかにありながら、ロシア社会は戦争の現実について無知でした。
従軍経験のある貴族階級出身の作家として、戦場の真実をありのままに描き、戦争の悲惨さ、無意味さをロシアの人々に伝えたい。
作品の内容
実際にセヴァストーポリ要塞で従軍した経験に基づき、1854 年 9 月から 1855 年 9 月までの 1 年間におけるセヴァストーポリ包囲戦を三部構成で描きます。
* 第一部:1854 年 12 月、士官として初めてセヴァストーポリに到着した若者を通じ、戦場という非日常的な空間への戸惑いと、そこで生活する人々の様子を描写します。
* 第二部:1855 年 5 月、セヴァストーポリで戦う人々の日常と心理を、負傷した兵士とその兄である士官の視点から描きます。
* 第三部:1855 年 8 月、セヴァストーポリ陥落直前の攻防戦を、名もなき兵士の視点から描きます。
作品の特色
* 従来の戦争文学の様式とは異なり、英雄的な側面ではなく、戦争の現実、兵士の日常、そして内面に焦点を当てます。
* 戦場に生きる様々な立場の人間模様を、それぞれの視点から多層的に描写することにより、戦争の全体像を描き出します。
* 戦場の詳細な描写と登場人物の心理描写を通じて、戦争の無意味さ、残酷さを訴えます。