トルストイのクロイツェル・ソナタの面白さ

トルストイの「クロイツェル・ソナタ」は、愛と嫉妬に狂っていく男の独白という形で、夫婦間の愛憎劇を描いた作品です。語り手であるポズドヌイシェフは、妻とヴァイオリニストの関係を疑い、嫉妬に駆られ、ついには妻を殺害してしまう男です。

彼の独白は、論理的でありながらも、狂気と正気の間を揺れ動くような不安定さを孕んでいます。

例えば、物語冒頭では、ポズドヌイシェフは結婚制度の不自然さや、男女間の肉欲的な関係への嫌悪を理路整然と語ります。しかし、物語が進むにつれ、妻への愛と憎しみ、そして自己嫌悪に苦しむ姿が露わになっていきます。

このように、論理的な思考と感情的な混乱が入り混じったポズドヌイシェフの独白は、読者を彼の内面に引き込み、心理的な緊張感を与える魅力があります。

「クロイツェル・ソナタ」は、単なる愛憎劇ではなく、19世紀後半のロシア社会における結婚制度や男女の関係に対する痛烈な批判が込められた作品でもあります。

ポズドヌイシェフは、結婚は偽善と欺瞞に満ちていると主張します。彼にとって、結婚は恋愛感情に基づくものではなく、社会的な体面や財産、子孫を残すための手段でしかありません。

また、彼は男女間の肉欲的な関係が、人間の精神的な堕落を招くと考えています。

このようなポズドヌイシェフの主張は、当時のロシア社会においては非常に過激で挑発的なものでした。しかし、彼の言葉は、現代社会においてもなお、私たちに結婚や男女の関係について深く考えさせる力を持っています。

「クロイツェル・ソナタ」というタイトルが示すように、音楽がこの作品において重要な役割を果たしています。

特に、ベートーヴェンの「クロイツェル・ソナタ」は、ポズドヌイシェフの妻とヴァイオリニストの関係を象徴するだけでなく、彼の精神状態を揺さぶる効果も持っています。

彼は、音楽の力によって高揚したり、逆に絶望に突き落とされたりします。

このように、音楽が人間の心理に及ぼす影響を巧みに描いたことも、「クロイツェル・ソナタ」の魅力の一つと言えるでしょう。

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読書意欲が高いうちに読むと理解度が高まります。