## デュルケームの宗教生活の原初形態の位置づけ
デュルケーム社会学における位置づけ
デュルケームにとって、社会学の根本問題は社会の結合原理を探求することにありました。近代社会の到来とともに伝統的な社会結合のあり方が変容していく中で、デュルケームは、個人主義の台頭にもかかわらず社会が秩序を維持し続けるメカニズムを解明しようとしました。
彼の初期の著作である『社会分業論』(1893)では、伝統的な社会における「機械的連帯」から近代社会における「有機的連帯」への移行を分析しました。前者は同質的な成員間の共通の信念や感情に基づく結合であり、後者は分業の進展に伴う相互依存関係に基づく結合です。
しかし、デュルケームはこの著作で社会結合の根源を十分に解明できたとは考えていませんでした。そこで、彼はより根源的なレベルでの社会結合のあり方を明らかにするために、『宗教生活の原初形態』(1912)を執筆しました。この著作において、デュルケームは社会の起源そのものに目を向け、宗教が社会結合の根源的な形態であることを明らかにしようとしました。
宗教の社会学的定義
デュルケームは、『宗教生活の原初形態』において、宗教を従来の神や超越者といった概念ではなく、社会学的観点から定義しました。彼は宗教を「聖なるものと俗なるものの二分された領域を前提とする、信念と儀礼とから成る統一体系」と定義しました。
デュルケームは、聖なるものが社会の象徴であり、人々の集団生活から生み出されたものであると主張しました。宗教儀礼は、人々が集団で聖なるものと接触することで、集団の一体感や連帯感を強化する役割を果たすと考えました。
トーテミズムの分析
デュルケームは、オーストラリア先住民社会におけるトーテミズムを分析することで、宗教の起源と社会結合の関係を明らかにしようとしました。トーテミズムは、特定の動植物をトーテムとして崇拝し、そのトーテムと氏族との間に特別な関係があると信じる信仰体系です。
デュルケームは、トーテムが氏族の象徴であり、氏族成員の集団意識を体現したものであると解釈しました。そして、トーテムに対する儀礼は、氏族成員の集団意識を強化し、社会結合を維持する役割を果たすと考えました。
宗教の社会機能
デュルケームは、宗教が社会結合の根源であるだけでなく、道徳、知識、芸術など、人間の文化の諸側面の起源にもなると主張しました。彼は、宗教が人々に共通の価値観や規範を提供することで、社会秩序を維持する役割を果たすと考えました。
また、宗教は人々に世界を理解するための枠組みを提供し、知識の発展にも貢献すると考えました。さらに、宗教儀礼は、音楽、踊り、演劇などの芸術を生み出す源泉となったとも考えました。
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