## デカルトの方法序説の発想
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知の確実性への疑念
デカルトは、当時の学問が依拠していたアリストテレス哲学に疑念を抱いていました。特に、感覚経験や伝統的な権威に基づく知識は、真に確実なものではないと考えたのです。彼は、真に揺るぎない基礎の上に立つ確実な知識体系を構築することを目指しました。
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方法的懐疑
確実な知識に到達するために、デカルトは「方法的懐疑」を採用しました。これは、少しでも疑わしいものはすべて虚偽として棄却していくという方法です。感覚は時に私たちを欺くため、感覚的情報は疑わしいとされました。同様に、夢と現実の区別がつかないことがあるように、私たちが当然だと思っていることも疑わしい可能性があります。
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「我思う、ゆえに我あり」
徹底的な懐疑を経てもなお、疑うという行為を行っている「私」の存在だけは疑いようがありません。これが「我思う、ゆえに我あり (Cogito, ergo sum)」という有名な命題です。デカルトは、この第一原理を土台として、確実な知識体系を築き上げようとしました。
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明晰判明な観念
「我思う、ゆえに我あり」から出発し、デカルトは「明晰判明な観念」のみを真理として受け入れることにしました。明晰判明な観念とは、疑う余地なく明瞭に認識できる観念のことです。例えば、数学的な真理や、神の存在などは、明晰判明な観念としてデカルトによって認められました。
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方法の提示
「方法序説」の中で、デカルトは確実な知識に到達するための具体的な方法を提示しています。それは、以下の四つの規則からなります。
1. 明晰判明に認識できるものだけを真として受け入れること。
2. 困難な問題を、できるだけ小さな部分に分割すること。
3. 単純なものから複雑なものへと、順序立てて考察すること。
4. 抜け漏れや重複がないか、全体を注意深く見直すこと。
これらの規則に従うことで、私たちは偏見や誤謬に陥ることなく、真理に到達できるとデカルトは考えました。