ディケンズの荒涼館の対極
ジェーン・オースティンの「高慢と偏見」
チャールズ・ディケンズの「荒涼館」とジェーン・オースティンの「高慢と偏見」は、どちらも19世紀のイギリス文学を代表する傑作ですが、テーマ、文体、舞台設定など、多くの点で対照的な作品です。
### テーマの対比
「荒涼館」は、産業革命期のイギリス社会における貧富の格差、司法制度の腐敗、社会的不正などをテーマに、広大な視野でロンドンと地方都市の両方を舞台に、複雑な人間模様を描いています。一方、「高慢と偏見」は、主に田舎の中流階級の恋愛模様を描き、結婚、社会的地位、人間関係における偏見と誤解などをテーマにしています。
### 文体と語り口の対比
ディケンズは、詳細な描写、劇的な展開、風刺的な語り口を特徴とし、社会の暗部を容赦なく描き出すリアリズムを得意としました。「荒涼館」では、複雑な伏線と多数の人物が登場し、重厚な文体で物語が展開されます。一方、オースティンの文体は、簡潔で洗練されており、登場人物の会話や心理描写を通して、皮肉とユーモアを交えながら物語が展開されます。「高慢と偏見」では、登場人物の限られた世界観と人間関係に焦点を当て、社会全体を描写するのではなく、個人の内面に迫る作品といえるでしょう。
### 舞台設定の対比
「荒涼館」の舞台は、霧が深く陰鬱なロンドンと、荒廃した地方都市であり、物語全体の雰囲気を暗く重苦しいものにしています。一方、「高慢と偏見」の舞台は、主にイギリスの田園地帯であり、自然豊かな牧歌的な風景の中で物語が展開されます。
このように、「荒涼館」と「高慢と偏見」は、テーマ、文体、舞台設定など多くの点で対照的な作品であり、19世紀のイギリス文学の多様性を示す好例と言えるでしょう。