## ダーウィンの種の起源の周辺
出版と影響
「種の起源」あるいは正式には「自然選択の方途による、すなわち生存競争において有利な種族の存続による、種の起源について」は、1859年11月24日にイギリスで出版されました。出版年から160年以上が経過していますが、生物学のみならず、現代思想にも多大な影響を与え続けている自然科学書の古典です。
ダーウィンと進化論
チャールズ・ダーウィンは、1809年生まれのイギリスの自然科学者です。彼は、ビーグル号での航海を通して、動植物や地質を観察し、膨大な量の標本を収集しました。これらの経験と観察を通して、ダーウィンは生物が共通の祖先から長い時間をかけて、自然選択によって変化し、多様性を生み出してきたという進化論を提唱しました。
ダーウィン以前にも、生物が変化するという考え方は存在していました。フランスの生物学者ジャン＝バティスト・ラマルクは、用不用説を提唱し、生物はよく使う器官は発達し、使わない器官は退化するという考えを示しました。しかし、ダーウィンの自然選択説は、変異と遺伝、そして環境への適応という観点から、進化のメカニズムをより明確に説明しました。
自然選択説
自然選択説は、「種の起源」の中核をなす理論です。ダーウィンは、自然選択が働くための以下の３つの条件を挙げました。
1. **変異**: 個体間には様々な変異が存在する。
2. **遺伝**: 変異は親から子へと遺伝する。
3. **生存と繁殖の成功**: 環境に適した変異を持つ個体は、そうでない個体よりも多くの子孫を残す。
これらの条件が満たされると、環境に適した変異を持つ個体が世代を重ねるごとに増加し、最終的には新しい種が形成される可能性があるとダーウィンは主張しました。
「種の起源」の内容
「種の起源」は、全14章から構成されています。ダーウィンは、家畜や栽培植物の品種改良の例を挙げながら、変異と遺伝について説明し、自然選択のメカニズムを詳細に解説しました。また、化石記録や生物地理学、形態学、発生学など、様々な分野の知見を駆使して、進化論の証拠を提示しました。
「種の起源」は、当時の科学界に大きな衝撃を与え、激しい議論を巻き起こしました。ダーウィンの進化論は、聖書に書かれた天地創造の考え方に反するとされ、宗教界からの強い反発を受けました。しかし、多くの科学者はダーウィンの主張に賛同し、進化論は徐々に受け入れられていきました。
「種の起源」の限界
「種の起源」は画期的な著作でしたが、ダーウィンは遺伝のメカニズムを完全に理解していたわけではありませんでした。メンデルの遺伝の法則が再発見され、遺伝学が発展するのは20世紀に入ってからのことです。また、「種の起源」では、人間の進化についてはほとんど触れられていませんでした。ダーウィンは、人間の進化については別の著書「人間の由来と性選択」で詳しく論じています。