## ダイシーの法と世論の原点
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ダイシーの法と世論について
イギリスの法学者・憲法学者であるアルバート・ヴェン・ダイシー(Albert Venn Dicey, 1835-1922)は、1905年に刊行した著書『Law and Public Opinion in England during the Nineteenth Century』(邦題:『イギリスにおける法と世論―19世紀における考察』)の中で、19世紀イギリスにおける立法と世論の関係について分析しました。
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19世紀イギリスにおける法の変遷
ダイシーは、19世紀のイギリスにおいて、個人の自由を重視する古典的な自由主義(laissez-faire)から、国家による社会福祉や経済活動への介入を容認するコレクティビズム(collectivism)へと、法の性格が大きく変化したことを指摘しました。
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世論の影響
ダイシーは、この法の変遷の背景には、世論の変化が大きく影響したと論じました。19世紀初頭には、個人の自由を最大限に尊重し、国家の介入を最小限に抑えるべきだという自由主義的な思想が、知識人や政治家の間で支配的でした。しかし、19世紀半ば以降、産業革命の進展に伴う貧困や労働問題の深刻化を受けて、国家による社会福祉の必要性が広く認識されるようになり、世論は徐々にコレクティビズムへと傾斜していきました。
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ダイシーの見解
ダイシーは、このような世論の変化を、立法に反映させることが、民主主義国家における政治の重要な役割であると考えていました。