## タキトゥスのゲルマニアの価値
### 価値１：古代ゲルマン民族に関する貴重な資料である
「ゲルマニア」は、１世紀のローマ帝国の歴史家タキトゥスによって書かれた、ライン川とドナウ川以北に住むゲルマン民族に関する民族誌です。 この書は、当時のゲルマン民族の社会構造、政治体制、軍事制度、宗教、文化、習慣などについて、詳細な記述を提供しています。
例えば、ゲルマン民族が部族単位で生活し、王や族長によって統治されていたこと、戦争を重視し、勇敢な戦士を高く評価していたこと、自然崇拝を基盤とした宗教観を持っていたことなどが具体的に記されています。
### 価値２：ローマ帝国の状況を浮き彫りにする対比として機能する
タキトゥスは、「ゲルマニア」を執筆するにあたって、単にゲルマン民族の実態を記録するだけでなく、当時のローマ帝国の状況と比較することを意図していました。
例えば、ゲルマン民族の質素で禁欲的な生活様式や、相互扶助を重視する社会規範、指導者に対する強い忠誠心などは、贅沢に溺れ、政治腐敗が蔓延していた当時のローマ社会とは対照的なものとして描かれています。
### 価値３：その後の歴史研究に多大な影響を与えた
「ゲルマニア」は、古代ゲルマン民族に関する重要な史料として、その後の歴史研究に多大な影響を与えてきました。特に、中世ヨーロッパ世界の形成に大きな役割を果たしたゲルマン民族移動の背景を探る上で、欠かせない資料とされています。
また、19世紀のドイツでは、ナショナリズムの高まりの中で、「ゲルマニア」に描かれたゲルマン民族の勇猛さや高潔な精神が理想化され、国民意識の形成に利用されることもありました。