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ソシュールの一般言語学講義の価値

ソシュールの一般言語学講義の価値

価値1:言語学を独立した学問として確立

「一般言語学講義」以前、言語研究は歴史的な変化に焦点を当てた歴史言語学が主流でした。ソシュールは、言語を「現時点において、社会構成員に共通のものとして存在している体系」と捉える「共時的」な視点と、通時的な変化を追う「歴史的」な視点とを明確に区別しました。そして、共時的視点に立つことで、それまで歴史の中に埋もれていた「言語」そのものを、独立した研究対象として確立しました。これは、言語学を歴史学や文学といった隣接諸科学から独立させ、自律した学問分野としての道を切り開いた点で画期的なものでした。

価値2:言語というシステムの内部構造の解明

ソシュールは言語を、意味を持つ音声イメージである「シニフィアン」と、その音声イメージが指し示す概念である「シニフィエ」から成る「記号」の体系と捉えました。そして、個々の記号は、他の記号との差異によってのみ意味を持つと考え、「言語記号の恣意性」や「価値としての言語」といった革新的な概念を提唱しました。これらの概念は、言語を単なる記号の集まりではなく、相互に関係し合いながら全体として意味を生み出す、精緻なシステムとして理解する枠組みを提供しました。

価値3:構造主義という思想運動の基盤

ソシュールの言語観は、20世紀後半に人文・社会科学分野を席巻した「構造主義」という大きな知的潮流の原点となりました。構造主義は、人間の文化や社会現象を、言語と同様に、要素間の関係性によって成り立つ構造として捉え、その背後にある普遍的な法則を明らかにしようとする思想運動です。ソシュールの言語理論は、構造主義の旗手であるレヴィ=ストロースや、記号論を体系化したバルトらに多大な影響を与え、文学、人類学、心理学など多様な分野に大きな影響を与えました。

このように、「一般言語学講義」は、言語学という学問分野を確立しただけでなく、言語に対する全く新しい視点を提供することで、20世紀以降の思想や文化に多大な影響を与えました。その革新的な内容は、今日もなお、言語学者だけでなく、幅広い分野の研究者に重要な示唆を与え続けています。

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