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スミスの道徳感情論の表象

## スミスの道徳感情論の表象

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表象の概念

アダム・スミスは『道徳感情論』の中で、「表象」という言葉を多義的に用いているため、その意味を特定するには注意が必要です。大きく分けて、以下の二つの意味で使われていると考えられています。

1. **広義の表象**: 外的な対象や行為だけでなく、他者の情念、自分自身の過去の感情、さらには道徳的判断までも含む、意識内容全般を指します。
2. **狭義の表象**: 広義の表象のうち、特に他者の感情を想像によって捉えたものを指します。

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共感と表象

スミスは、人間が道徳的判断を行う上で、「共感(sympathy)」が重要な役割を果たすと主張しました。彼が言う「共感」とは、単に他者と同じ感情を共有することではなく、他者の立場に身を置いて、その状況下であれば自分がどのような感情を抱くかを想像する能力を指します。そして、この共感を実現するために不可欠なのが「表象」なのです。

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想像力と表象

私たちは、他者の置かれた状況、表情、身振りなどを観察することで、その人がどのような感情を抱いているかを想像します。この想像は、必ずしも正確であるとは限りませんが、私たち自身の過去の経験や知識に基づいて行われます。スミスは、この想像力を用いることによって、私たちは自分とは異なる立場、異なる価値観を持つ他者に対しても、一定の理解と共感を示すことができると考えました。

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表象の限界

スミスは、表象が完全無欠なものではないことも認識していました。私たちは、自分自身の経験や知識の範囲内でしか、他者を理解することができません。また、利己心や偏見といった感情は、私たちの表象を歪める可能性もあります。

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道徳判断における表象の役割

スミスは、道徳判断は理性に基づくのではなく、共感に基づく感情的な反応であると主張しました。私たちは、他者の行動を観察し、その行動がもたらすであろう感情を想像することによって、その行動を是認するか、非難するかを判断します。そして、この判断を下す際に重要な役割を果たすのが、他者の感情を想像によって捉える「表象」なのです。

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