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スミスの国富論を深く理解するための背景知識

## スミスの国富論を深く理解するための背景知識

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18世紀イギリスの社会経済状況

18世紀のイギリスは、農業革命と産業革命の黎明期にあたり、社会経済が大きく変動していました。
農業革命では、囲い込み運動によって農地の私有化が進み、生産性が向上しました。
同時に、農村から都市への人口移動が加速し、都市部では労働力が供給過剰の状態となりました。
産業革命では、蒸気機関などの発明によって工場制機械工業が発展し、大量生産が可能になりました。
これにより、イギリスは世界初の工業国へと変貌を遂げ、経済力は飛躍的に向上しました。
しかし、貧富の格差は拡大し、都市部では貧困層の生活は劣悪なものとなりました。
スミスは、このような社会経済状況を目の当たりにし、国富の増大と国民の福祉向上を実現するための経済システムを模索しました。

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重商主義

スミス以前の経済思想の主流は重商主義でした。
重商主義は、国家の富を貴金属の保有量と同一視し、貿易黒字によって貴金属を蓄積することを目指しました。
そのため、輸出を奨励し、輸入を抑制する政策がとられました。
また、植民地を獲得し、そこから資源を搾取することも重視されました。
スミスは、重商主義の政策は国家全体の富を増やすのではなく、特定の産業や商人などの利益につながるだけだと批判しました。
彼は、自由貿易こそが国富を増やし、国民全体の福祉を向上させる道だと主張しました。

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啓蒙主義

スミスは、18世紀ヨーロッパで興った啓蒙主義の影響を強く受けていました。
啓蒙主義は、理性と経験に基づいて社会や政治を改革しようとする思想運動です。
自由、平等、人権などの概念が重視され、絶対王政や封建制などの旧体制に対する批判が展開されました。
スミスは、啓蒙主義の思想を取り入れ、人間の理性と自由を重視する経済理論を構築しました。
彼は、政府の介入を最小限にとどめ、個人の経済活動を自由にすることで、市場メカニズムが働き、国富が増大すると考えました。

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自然法思想

自然法思想は、人間の理性によって認識できる普遍的な法が存在するという考え方です。
この法は、神によって与えられたもの、あるいは人間の自然本性から導き出されるものと考えられています。
自然法思想は、中世以来、ヨーロッパの思想に大きな影響を与えてきました。
スミスも自然法思想の影響を受けており、人間の経済活動にも自然法則が働くと考えました。
彼は、自由競争、分労、利己心などの要素が自然法則に基づいて経済活動を活性化させ、国富を増大させると主張しました。

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道徳感情論

スミスは、「国富論」を著す以前に「道徳感情論」という倫理学の著作を著しています。
この著作でスミスは、人間の道徳的な判断は「共感」に基づくと主張しました。
共感とは、他者の感情を理解し、共有する能力です。
スミスは、人間は利己的な存在であると同時に、他者への共感も持ち合わせていると考えました。
「国富論」では、利己心によって駆動される市場メカニズムが、結果として社会全体の利益につながるとされていますが、
この考え方の根底には、「道徳感情論」で示された人間の共感能力への信頼があると考えられます。

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その他の影響

スミスは、上記の思想家や学派以外にも、様々な影響を受けていました。
例えば、フランシス・ハッチソン、デイヴィッド・ヒュームなどのスコットランド啓蒙主義の思想家、
あるいは、ジョン・ロック、モンテスキューなどの政治思想家などです。
スミスは、これらの思想家たちの考え方を吸収し、独自の経済理論を構築していきました。
彼の思想は、その後の経済学に大きな影響を与え、古典派経済学の基礎となりました。

これらの背景知識を理解することで、「国富論」の内容をより深く理解し、スミスの思想の全体像を把握することが可能になります。

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