## スミスの国富論と人間
「見えざる手」と人間の利己心
アダム・スミスの主著『国富論』は、経済学の古典として広く知られていますが、その根底には人間に対する深い洞察があります。スミスは、人間は利己的な欲求を持つ存在であると捉えていました。人々は自身の利益を追求するために行動し、それが結果として社会全体の利益にも繋がると彼は考えました。
分業と共感
スミスは『国富論』の中で、分業が生産性向上に大きく貢献すると論じています。興味深いのは、彼が分業の動機として、利己心だけでなく、人間の共感能力も挙げている点です。 人は他者の幸福を願う気持ちがあり、その共感によって、他者と協力し、互いの利益のために労働するようになるというのです。
市場と社会秩序
『国富論』の中心的な概念である「見えざる手」は、個人の利己的な行動が、市場メカニズムを通じて、社会全体の利益に貢献するという考え方を表しています。スミスは、政府による過度な介入を批判し、自由な市場こそが資源を効率的に配分し、経済成長を促進すると主張しました。
「国富論」が示唆するもの
『国富論』は、経済学の書であると同時に、人間の本質に迫る書でもあります。スミスは、人間を善悪二元論で捉えるのではなく、複雑で多面的な存在として理解しようとしました。利己心や共感、理性といった人間の様々な側面が、経済活動や社会構造とどのように関わっているのか、『国富論』は多くの示唆を与えてくれます。