## スピノザのエチカの表象
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表象とは
スピノザは、『エチカ』において、人間の認識を3つの段階に分けています。第一が「表象」、第二が「理性」、そして第三が「直観知」です。このうち、表象は最も基本的で受動的な認識の形態を指します。
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表象の成立
スピノザによれば、表象は「心における観念の最初の種類」(『エチカ』第二部 定義3)として定義されます。これは、外部からの刺激を感覚器官で受容し、心に不完全かつ断片的な形で描き出されたものです。外界の事物そのものを認識しているのではなく、あくまでも心の中に生じた像を捉えているに過ぎません。
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表象の種類
『エチカ』第二部 定義3の説明において、スピノザは表象を三種類に分類しています。
1. **感覚からの表象**: 五感を通じて得られる、外界の具体的な形象や音、匂いなどの表象。例えば、太陽の見た目の大きさや、鳥のさえずりなど。
2. **経験からの表象**: 感覚経験を基に、心に形成される連合や類推による表象。例えば、「太陽は暖かい」という認識や、「煙を見たときに火を連想する」といったもの。
3. **伝聞からの表象**: 他者からの言葉や文字などを通じて得られる表象。例えば、歴史上の出来事や、外国の文化に関する知識など。
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表象の限界
表象はあくまでも外界の事物の一側面を捉えた断片的な認識に過ぎません。そのため、表象に基づく認識は、しばしば誤謬や混乱を生み出す原因となります。真の認識に到達するためには、「理性」による媒介が必要となります。