## スピノザのエチカの世界
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神あるいは自然
スピノザの哲学において、神と自然は同一のものとして理解されます。
「神あるいは自然」と呼ばれるこの実体は、無限の属性を持つ唯一の実体です。
私たちが知覚する世界、そして私たち自身を含むすべてのものは、この神の属性の様態(modification)として存在します。
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属性と様態
スピノザは、神あるいは自然を無限の属性によって構成されるとしました。
属性とは、神あるいは自然の本質を構成するものです。
私たち人間は、その無限の属性のうち、思考と空間という二つの属性のみを認識することができます。
なぜなら、私たち自身が思考と空間の様態として存在しているからです。
様態とは、属性の具体的な現れ方であり、有限なものです。
たとえば、「この赤いリンゴ」や「あの熱い太陽」などは、それぞれ空間と思考の様態です。
様態は、神あるいは自然という実体なしには存在できません。
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コナトゥス
コナトゥスとは、ラテン語で「努力」を意味し、スピノザ哲学における重要な概念です。
すべてのものは、自己の存在を維持しようと努める内的な力を持っており、これをコナトゥスと呼びます。
人間もまた、コナトゥスに従って、自己保存のために努力します。
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情念
スピノザは、人間の感情を「情念」と呼び、それを受動的なものとして捉えました。
情念は、外部からの刺激によって引き起こされる、私たちの力(コナトゥス)の増減に対応するものです。
情念は、私たちを理性的な判断から遠ざけ、不自由な状態に陥れる可能性があります。
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理性と自由
スピノザは、理性に従って生きることを重視しました。
理性は、物事をありのままに、つまり神あるいは自然の一部として理解する力です。
理性に従って生きることで、私たちは情念に支配されることなく、真の自由を獲得することができます。
真の自由とは、外部からの強制ではなく、自らの本性に従って行動することです。