スティーヴンスンの宝島の思索
冒険と欲望
「宝島」は、海賊、財宝、冒険といった要素が詰まった、典型的な冒険小説です。物語は、主人公ジム・ホーキンズの視点から語られ、彼が海賊の宝の地図を手に入れたことから始まるスリリングな航海へと読者を誘います。この作品は、未知の世界への憧憬、危険を冒してでも財宝を手に入れたいという欲望、そしてスリルを求める人間の根源的な欲求を描いています。
宝探しの旅は、同時にジム自身の成長物語でもあります。彼は、正直な宿屋の息子から、海賊との対決や裏切り、陰謀渦巻く世界を経験することで、精神的に大きく成長を遂げていきます。彼は、持ち前の勇気と機転、そして仲間との友情を通して、数々の困難を乗り越えていきます。
善と悪の対比
「宝島」には、ジム・ホーキンズやリブシー先生といった善人だけでなく、ジョン・シルバーに代表される海賊のような悪人も登場します。特に、シルバーは魅力的な悪役として描かれており、冷酷な一面を見せながらも、時にはジムに対して奇妙な友情のような感情を抱く様子も描かれています。
この善と悪の対比は、単純な二項対立ではなく、人間の心の複雑さを浮き彫りにしています。シルバーは悪党でありながら、どこか憎みきれない人間的な側面も持ち合わせています。この複雑な人物造形により、読者は人間の心の奥底にある光と影について考えさせられます。
海賊という存在
「宝島」は、海賊黄金時代を舞台としており、当時の海賊たちの生活や文化を垣間見ることができます。海賊たちは、自由を求めて海に出た者、社会から追放された者、あるいは冒険を求める者など、様々な背景を持つ者が集まっていました。
スティーブンソンは、海賊たちの生活を美化することなく、彼らの残虐性や裏切り、暴力といった側面も赤裸々に描いています。しかし、同時に、彼らが独自のルールや規律、仲間意識を持って生きていたことも示唆しています。海賊という存在を通して、スティーブンソンは、人間の自由への渇望と、社会の規範から逸脱した存在の光と影を描いています。