## スチュアートの政治経済学の諸原理を読む
1. 著者と時代背景
ジョン・スチュアート・ミルは、19世紀イギリスの哲学者、経済学者、政治家です。1806年に生まれ、幼少期から父親であるジェームズ・ミルから英才教育を受けました。ベンサムの功利主義の影響を強く受け、論理学、経済学、政治学など幅広い分野で活躍しました。
2. 出版と影響
『経済学原理』は、1848年に初版が出版されました。本書は、アダム・スミスの『国富論』と並んで古典派経済学の代表的な著作とされ、19世紀後半のイギリス経済学界に大きな影響を与えました。
3. 内容
本書は、全5巻から構成され、生産、分配、交換、進歩、政府の役割など、経済学の主要なテーマを網羅しています。スミスやリカードの古典派経済学の理論を継承しつつも、独自の視点を加えています。
* **生産**: 労働、資本、土地の三要素による生産の仕組み、分業の利益、人口論などを論じています。
* **分配**: 賃金、利潤、地代といった分配の決定要因や、社会における富の分配のあり方について考察しています。
* **交換**: 価値の決定、貨幣の役割、国際貿易など、市場メカニズムに関する分析を行っています。
* **進歩**: 経済成長の要因、人口増加と経済発展の関係、分配の不平等問題などを論じています。
* **政府の役割**: 政府の経済活動への介入の是非、租税の原則、貧困対策など、経済政策に関する見解を述べています。
4. 特徴
* **古典派経済学の体系化**: アダム・スミスやリカードの理論を整理し、体系的な経済学の理論を構築しました。
* **功利主義に基づく経済思想**: ベンサムの功利主義の影響を受け、最大の幸福を実現する経済システムを追求しました。
* **社会改革への関心**: 貧困問題や労働問題に関心を持ち、経済学の知見に基づいた社会改革を主張しました。
5. 現代における意義
『経済学原理』は、古典派経済学の重要な著作として、現代の経済学においても参照され続けています。特に、自由貿易の重要性、市場メカニズムの有効性、政府の役割の限界など、現代の経済政策にも通じる論点を提示している点が注目されます。