## スタンダールの赤と黒の対極
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対極となりうる作品
「スタンダールの赤と黒」の対極に位置する歴史的名著を考える上で、いくつかの解釈軸が考えられます。
まず、「赤と黒」が、ナポレオンを失った後のフランス社会における野 ambition 、 出世欲、そして社会の矛盾を描いた作品であることを踏まえる必要があります。 主人公ジュリアン・ソロールは、自身の野心を実現するために、当時の社会において「赤」(軍隊)と「黒」(聖職者)という二つの道で葛藤します。
その上で、「対極」になりうる作品として、以下の様な軸と、具体的な作品名を挙げることが可能でしょう。
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1. 社会構造への順応と諦念: バルザック「ゴリオ爺さん」
「赤と黒」が社会への反抗と野心をテーマとしているのに対し、「ゴリオ爺さん」は、当時のフランス社会における金銭欲と親子関係の歪みを描きながらも、最終的には社会構造への諦観を描いている点が対照的と言えるでしょう。
「ゴリオ爺さん」の主人公ゴリオは、娘たちに財産を貢ぎ尽くし、悲惨な最期を迎えます。彼の姿は、社会の底辺で生きる人々の現実を突きつけるものであり、ジュリアンのように野心に燃え、社会と対峙する姿とは対照的です。
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2. 静的な世界観と内面描写: ジェーン・オースティン「高慢と偏見」
「赤と黒」がフランス社会の動乱を背景に、野心的な主人公の行動を描いた作品であるのに対し、「高慢と偏見」は、当時のイギリスの閉鎖的な上流社会を舞台に、恋愛における偏見と理解を描いた作品です。
「赤と黒」は社会や歴史の動きと密接に関わる物語であるのに対し、「高慢と偏見」は恋愛という普遍的なテーマを、登場人物たちの内面描写を丁寧に重ねることで描き出しており、対照的な作品と言えるでしょう。
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3. 個人の自由意志の否定: ドストエフスキー「罪と罰」
「赤と黒」が、主人公ジュリアンの自由意志による行動とその結果を描いているのに対し、「罪と罰」は、主人公ラスコーリニコフが自身の哲学に基づいて罪を犯し、その罪の意識に苦悩する様を描いています。
「赤と黒」では社会構造が個人の選択に影響を与える様子が描かれている一方、「罪と罰」では、社会構造よりもむしろ、人間の深層心理や倫理観といった、より根源的な問題に焦点が当てられています。
これらの作品は、「スタンダールの赤と黒」とは異なるテーマや文体、社会背景を持つ作品であり、「赤と黒」と対比して読むことで、それぞれの作品への理解を深めることができるでしょう。