スタインベックの怒りの葡萄の面白さ

スタインベックの怒りの葡萄の面白さ

登場人物の描写の深さ

スタインベックは、ジョード一家をはじめとする登場人物を非常にリアルに、そして深く描写しています。彼らはただ「貧しい農民」という類型ではなく、それぞれに異なる性格、考え方、夢や希望を持った人間として描かれています。例えば、主人公のトム・ジョードは、短気で喧嘩っ早いながらも、家族思いで正義感の強い青年です。元伝道師のジム・ケイシーは、信仰を失いながらも人間に対する愛と献身的な精神を持ち続けています。このように、登場人物一人ひとりに焦点を当て、彼らの内面を丁寧に描くことで、読者は彼らの苦しみや喜びをより身近に感じ、感情移入することができます。

力強い筆致による社会批判

本作は、1930年代のアメリカを襲った大恐慌時代の農民たちの苦境をリアルに描写することで、当時の社会体制や経済システムへの痛烈な批判を展開しています。スタインベックは、銀行や地主といった資本家たちが、弱者である農民たちを搾取し、土地を追いやる様子を、容赦のない筆致で描いています。また、苦境の中で助け合う人々の姿を描く一方で、利己主義や暴力に走る人々の姿も描き出すことで、人間の複雑な本性を浮き彫りにしています。

希望を希求する人間の強さ

過酷な状況下におかれながらも、ジョード一家は希望を捨てず、懸命に生き抜こうとします。カリフォルニアへの旅路は苦難の連続ですが、彼らは家族の絆と、人間としての尊厳を胸に、決して諦めることなく前進します。このような人間の強さ、そして希望を希求する不屈の精神が、読者に深い感動を与えます。

詩情あふれる描写と力強い文体

スタインベックの文章は、力強く、それでいて詩的な美しさに満ちています。自然描写や人間の心理描写は、読者の五感を刺激し、物語の世界に深く引き込みます。また、当時の農民たちが使っていた方言を積極的に取り入れることで、リアリティと迫力を増しています。このような文体の魅力も、「怒りの葡萄」の大きな魅力の一つと言えるでしょう。

Amazonで詳細を見る
読書意欲が高いうちに読むと理解度が高まります。