スタインベックの怒りの葡萄と作者
作品背景
「怒りの葡萄」は、1939年に出版されたジョン・スタインベックによる小説です。世界恐慌時代のアメリカを舞台に、オクラホマ州からカリフォルニア州への移住を強いられたジョード一家をはじめとする農民たちの苦難を描いています。
スタインベックの生い立ちと作品の関係
スタインベックは1902年、カリフォルニア州サリナスで生まれました。農業が盛んなこの地域で育ち、幼い頃から貧困や労働者の厳しい現実を目のにしてきました。10代の頃には自らも農場で働き、後に大学で文学を学ぶ傍ら、肉体労働に従事した経験もあります。これらの経験が「怒りの葡萄」のリアリティを生み出す基盤となりました。
取材活動と作品への影響
スタインベックは「怒りの葡萄」の執筆にあたり、綿密な取材を行いました。1936年にはサンフランシスコ・ニュース紙の特派員として、カリフォルニア州の移民キャンプを訪れ、そこで生活する人々の窮状を目の当たりにしました。 また、実際に移民と共に旅をしたり、農園で働いたりもしました。これらの経験は作品に大きな影響を与え、「怒りの葡萄」は単なるフィクションではなく、当時の社会状況を克明に記録したノンフィクションの側面も持ち合わせています。
作品に込められたスタインベックの思想
スタインベックは「怒りの葡萄」を通して、社会の不条理や人間の尊厳、連帯の重要性を訴えました。彼は資本主義社会の矛盾や、弱者に対する搾取を批判し、人間性を喪失した社会に対する怒りを作品にぶつけています。