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スタインベックの二十日鼠と人間から学ぶ時代性

スタインベックの二十日鼠と人間から学ぶ時代性

大恐慌時代の厳しい現実

 1930年代のアメリカを襲った大恐慌は、多くの人々の生活を一変させました。職を失い、住む家も失った人々は、日々の糧を求めて各地を転々とするしかありませんでした。ジョージとレニーもまた、そんな厳しい現実の中で懸命に生きる二人の季節労働者です。彼らはカリフォルニアの農場を転々としながら、わずかな賃金で過酷な労働に従事しています。

 スタインベックは、作中で彼らの生活を克明に描写することで、大恐慌がもたらした貧困、飢餓、そして絶望感を浮き彫りにしています。ジョージとレニーが夢見る「自分の土地を持つ」というささやかな願いでさえ、この時代においてはあまりにも遠い未来のように思えます。

社会的弱者への眼差し

 当時のアメリカ社会では、人種差別、女性差別、障害者差別などが根強く存在していました。スタインベックは、「二十日鼠と人間」の中で、そうした社会の歪みに苦しむ人々の姿も描いています。

 例えば、レニーは知能に障害を持つ大男であり、周囲の人々から偏見の目を向けられています。また、黒人の労働者であるクロックスリーは、他の白人労働者たちから差別を受け、孤独な生活を強いられています。さらに、牧場主の息子の妻であるカーリーは、女性であるがゆえに自分の意志を自由に表現することができず、孤独と不満を抱えています。

 スタインベックは、こうした社会的弱者に対する温かいまなざしを通して、当時のアメリカ社会が抱えていた深刻な問題を浮き上がらせています。

人間の孤独と友情

 厳しい現実の中で生きるジョージとレニーにとって、二人の友情は数少ない心の支えです。レニーはジョージを慕い、ジョージはそんなレニーを守りながら、二人で力を合わせて生きていこうとします。

 しかし、周囲の人々は彼らの友情を冷ややかに見たり、利用しようと企んだりします。そして、物語が進むにつれて、二人の友情は、逃れられない運命によって大きく揺さぶられることになります。

 スタインベックは、ジョージとレニーの友情を通して、厳しい時代における人間の孤独と、それでもなお人を信じようとする心の尊さを描き出しています。

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