## ジョイスのダブリン市民の力
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麻痺
「ダブリン市民」は、しばしば、そこに住む人々を覆う麻痺の感覚によって特徴付けられます。この麻痺は、社会的、政治的、宗教的な力によって、アイルランドの人々にもたらされたものです。ダブリン市民は、自分たちの生活や街に不満を感じながらも、行動を起こしたり、変化をもたらしたりすることができません。
この麻痺は、物語の中で様々な形で表現されています。例えば、「エヴリン」では、主人公のエヴリンは、虐待的な父親から逃れるために、恋人とブエノスアイレスへ行くことを決意しますが、最終的には、過去の束縛から逃れることができず、ダブリンに残ることになります。「二人の若紳士」では、二人の医学生が、病気の女性の看病を頼まれますが、自分たちの無力さに直面し、最終的には何もすることができません。
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エピファニー
麻痺と並んで、「ダブリン市民」の重要なテーマとして、登場人物が経験する「エピファニー」があります。エピファニーとは、日常的な出来事を通して、登場人物が自分自身や周囲の世界に対する突然の洞察を得る瞬間のことです。
「アラビー」では、主人公の少年は、アラビアンバザールで、自分の片思いの対象である少女の叔父に冷たく扱われた後、自分の幼さや幻想の脆さに気づきます。「死者たち」では、主人公のガブリエル・コンロイは、妻のグレタの過去の恋愛話を通して、自分自身の結婚生活の空虚さや、自分自身の死に対する恐怖を悟ります。
これらのエピファニーは、登場人物に変化をもたらすこともあれば、無力感や絶望感をさらに深めることもあります。いずれにせよ、エピファニーは、登場人物が自分自身やダブリンという街の現実を直視することを余儀なくされる瞬間として、重要な役割を果たしています。