ジッドの食糧・人口・経済成長に影響を与えた本
マルサスの「人口論」の影響
トマ・ロベール・マルサスの著書「人口論」（初版は1798年）は、19世紀の経済学者や社会思想家に多大な影響を与えた書物であり、ピエール・ギッドもその例外ではありませんでした。マルサスは、人口は幾何級数的に増加する一方で、食糧生産は算術級数的にしか増加しないという、いわゆる「マルサスの法則」を提唱しました。この法則に基づき、マルサスは人口増加が必然的に食糧不足、貧困、飢饉を引き起こし、それが経済成長の大きな阻害要因となると主張しました。
ギッドはマルサスの思想に強い影響を受けながらも、その悲観的な見通しには必ずしも同意しませんでした。ギッドは、マルサスが技術革新や社会制度の改革による食糧生産の増大の可能性を過小評価していると批判しました。また、ギッドはマルサスが道徳的自制を人口抑制の唯一の手段として重視した点についても疑問を呈し、避妊などの人口抑制策の可能性を積極的に論じました。
ギッドの経済思想における「人口論」の位置づけ
ギッドは、マルサスの人口論を単に批判するのではなく、それを出発点として独自の経済思想を展開しました。ギッドは、人口増加が経済成長の阻害要因となる可能性を認めながらも、それが克服不可能な問題ではないと主張しました。ギッドは、技術革新、教育の普及、社会福祉の充実などを通じて、人口増加を経済成長の原動力に変えることができると考えました。
具体的には、ギッドは以下のような点でマルサスと異なる見解を示しました。
* **技術革新の可能性:** ギッドは、マルサスが技術革新による食糧生産の増大の可能性を過小評価していたと批判しました。ギッドは、科学技術の進歩によって食糧生産は飛躍的に増大する可能性があり、人口増加を十分に支えられるようになると考えました。
* **社会制度の改革:** ギッドは、社会制度の改革によっても人口問題を解決できると考えました。例えば、土地制度の改革によって農地の生産性を向上させたり、教育の普及によって人々の知識や技能を高めたりすることで、経済成長を促進し、人口増加による圧力を軽減できるとしました。
* **人口抑制策の多様性:** ギッドは、マルサスが道徳的自制を人口抑制の唯一の手段とした点についても批判的でした。ギッドは、避妊などの人工的な人口抑制策も積極的に活用すべきだと主張しました。
ギッドは、マルサスの人口論を批判的に継承しながらも、楽観的な未来展望を提示しました。ギッドの思想は、その後の社会主義思想や社会政策にも大きな影響を与え、人口問題に対する積極的な対応の重要性を広く認識させることに貢献しました。