ジスモンディの政治経済学新原理の話法
ジスモンディの論述の特徴
ジスモンディの著作、『経済学の新原理、あるいは富はどのようにして国民に役立つのか』は、古典派経済学への批判として、独自の経済学説を展開したことで知られています。彼の主張は、当時の社会状況や人々の生活実感に根ざしたものであり、その論述には以下のような特徴が見られます。
具体的な事例の重視
ジスモンディは、抽象的な理論構築よりも、現実の経済活動や社会問題を重視しました。 彼の著作では、工場労働者の窮状や農村の疲弊など、当時の社会問題を具体的に描写し、古典派経済学の理論が現実を反映していないことを批判しています。例えば、彼は工場制機械化によって失業者が増加することを指摘し、富の増加が必ずしも社会全体の幸福に繋がらないことを訴えました。
歴史的視点の導入
ジスモンディは、経済現象を歴史的な変化の中で捉えようとしました。彼は、経済法則は普遍的なものではなく、時代や社会状況によって変化すると考えました。 そのため、過去の経済体制や社会制度を分析することで、現代社会の問題点を明らかにしようと試みました。例えば、彼は封建制と資本主義を比較し、それぞれの時代における富の分配や社会構造の違いを分析しています。
倫理的観点からの考察
ジスモンディは、経済学を単なる効率性や利益追求の学問としてではなく、倫理や道徳と結びついたものとして捉えていました。 彼は、富の分配の不平等や貧困問題を深刻に受け止め、経済活動の目的は社会全体の幸福に貢献することであると主張しました。 そのため、彼の著作では、経済現象に対する倫理的な考察や社会正義の実現に向けた提言が多く見られます。