## ジスモンディの政治経済学新原理の美
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ジスモンディの思想における「美」の位置づけ
ジャン・シャルル・レオナール・シモンド・ド・ジスモンディは、その経済学研究において「美」を直接的に論じたわけではありません。彼の主眼は、富の増大よりも人々の幸福を重視する経済システム、そして道徳と経済活動の調和という点にありました。しかし、ジスモンディの思想を深く探求していくと、そこには独自の「美」の概念を見出すことができます。
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「調和」としての美:均衡と持続可能性
ジスモンディは、産業革命がもたらす急激な経済成長と社会の変容を目の当たりにし、その歪みに警鐘を鳴らしました。彼は、生産と消費、資本家と労働者、都市と農村といった社会の様々な要素間の「均衡」を重視し、それが崩れることで人々の幸福が損なわれると考えたのです。
ジスモンディにとって「美」とは、これらの要素が調和し、持続可能な形で共存している状態を指していたと言えるでしょう。過度な競争や利益追求は、この均衡を破壊し、社会に貧困や不平等といった「醜さ」をもたらすと彼は考えました。
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「人間の幸福」としての美:物質主義への批判
当時の主流派経済学が「富の増大」を至上命題としていたのに対し、ジスモンディは「人間の幸福」こそが経済活動の最終目的であるべきだと主張しました。彼は、物質的な豊かさだけが人を幸せにするのではなく、精神的な充足や社会とのつながりも重要であると考えたのです。
この点において、ジスモンディの「美」は、単なる物質的な豊かさではなく、精神的な豊かさや社会全体の幸福を含む、より広義な概念であったと言えるでしょう。彼は、人々が労働を通して自己実現し、社会に貢献できるような経済システムを理想としていました。