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ジスモンディの政治経済学新原理の価値

ジスモンディの政治経済学新原理の価値

ジスモンディの思想的背景と『新原理』の位置づけ

ジャン・シャルル・レオナール・シモンド・ド・シスモンディ(1773-1842)は、スイスのジュネーブ共和国に生まれた歴史家、経済学者、政治思想家です。18世紀末から19世紀前半にかけて活躍したシスモンディは、アダム・スミスを継承する古典派経済学の一員に数えられることもありますが、その思想はむしろ古典派経済学への批判と、後の社会主義経済学への橋渡しとして位置づけられます。

『新原理』で展開された古典派経済学批判

1819年に出版された主著『政治経済学新原理、あるいは富が人口に及ぼす影響に関する研究』(以下、『新原理』)において、シスモンディは、スミスやリカードらによって唱えられた自由放任主義経済を批判的に分析しました。当時の産業革命の進展は、富の増大とは裏腹に、労働者の貧困や社会の不安定化を招いていました。シスモンディは、このような社会状況を目の当たりにし、古典派経済学が前提としていた「経済の調和」という考え方に疑問を呈したのです。

『新原理』におけるシスモンディの主張

シスモンディは、『新原理』において、以下のような独自の経済思想を展開しました。

* **過少消費説:** シスモンディは、資本家の無制限な利潤追求が、労働者の賃金低下と消費の不足をもたらすと考えました。その結果、生産過剰と経済危機が発生し、社会全体の不安定化を招くと主張しました。
* **国家による経済介入の必要性:** シスモンディは、自由競争を是正し、経済の安定と社会正義を実現するために、国家による積極的な経済介入の必要性を訴えました。具体的には、労働時間の規制、最低賃金の導入、社会保障制度の充実などを提唱しました。
* **小規模生産者の擁護:** シスモンディは、産業革命によって没落していく小規模生産者や農民を擁護し、彼らが経済活動において重要な役割を果たすと考えました。大規模生産と機械化の進展は、労働者の疎外や社会の不安定化をもたらすと批判しました。

『新原理』の影響と評価

シスモンディの『新原理』は、出版当時から大きな反響を呼び、その後の社会主義思想や経済学に多大な影響を与えました。特に、マルクスはシスモンディを高く評価し、その過少消費説を自らの資本主義批判に取り入れました。また、シスモンディの思想は、19世紀後半にヨーロッパ諸国で展開された社会政策や労働運動にも影響を与えました。

現代社会における『新原理』の意義

今日、グローバリゼーションの進展や情報技術の革新など、シスモンディの時代とは大きく異なる社会状況に直面しています。しかし、貧富の格差の拡大、環境問題の深刻化、技術革新による雇用への影響など、現代社会が抱える課題の多くは、シスモンディが『新原理』で提起した問題と深く関わっています。彼の思想は、現代社会における経済のあり方や国家の役割を考える上で、重要な示唆を与えてくれると言えるでしょう。

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