シュムペンターの経済発展の理論の光と影

シュンペーターは、経済発展の原動力をイノベーションと、それを実行する主体である「企業家」に求めました。彼の理論は、新古典派経済学が前提としていた静的な均衡状態ではなく、絶えず変化する動的な経済を分析対象とした点で画期的でした。

シュンペーターは、イノベーションを以下の５つの類型に分類しました。

* 新しい財貨の生産
* 新しい生産方法の導入
* 新しい市場の開拓
* 新しい原料または半製品の獲得
* 新しい組織の実現

これらのイノベーションは、既存の生産手段の組み合わせを変化させ、生産性を向上させ、経済に新たな需要と供給を創出します。そして、このイノベーションこそが、経済発展の原動力となると彼は主張しました。

シュンペーターの理論は、経済発展のメカニズムを動的に捉え、イノベーションの重要性を強調した点で高く評価されています。しかし、その一方で、いくつかの批判も存在します。

まず、シュンペーターの理論は、イノベーションを企業家のみに帰属させている点が挙げられます。彼は、企業家精神を持った個人が、リスクを負ってイノベーションを起こすと主張しましたが、現実には、企業内での研究開発や、政府の政策、大学など、様々な主体がイノベーションに関与しています。

また、彼の理論は、イノベーションによる経済発展の過程で生じる、失業や格差の問題を十分に考慮していません。イノベーションは、新たな財・サービスを生み出し、経済を成長させますが、同時に、既存の産業や雇用を破壊する側面も持ち合わせています。

さらに、シュンペーターは、イノベーションを断続的に発生する不連続な現象として捉えましたが、現実には、技術進歩は、漸進的に進む場合も多いです。現代の経済学では、シュンペーターが重視した「破壊的イノベーション」だけでなく、既存技術を改良していく「連続的イノベーション」も重視されています。