## シュミットの政治的なものの概念の価値
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友と敵の区別
カール・シュミットは、その主著『政治的なものの概念』(1927年)において、政治を他の社会領域(経済、宗教、道徳など)から区別する独自の概念を提示しました。シュミットによれば、政治的なものは、「友と敵」の区別に還元されます。
この「友と敵」の区別は、具体的な政策やイデオロギーの違いを指すものではありません。重要なのは、ある集団が、自らの存在様式を根本的に否定する可能性のある他の集団と対峙し、極限状況においては武力衝突の可能性も孕む、という点です。 この「敵」の存在によって、政治的な共同体が形成され、主権、法、国家といった政治的な現象が生まれてくるとシュミットは主張します。
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政治の自律性
シュミットの「政治的なものの概念」は、政治の自律性を強調する点で重要な意味を持ちます。 シュミットは、当時の支配的な思想であった自由主義やマルクス主義が、政治を経済や道徳の下位概念として捉え、政治の固有の論理を軽視していると批判しました。
彼は、政治は経済や道徳とは異なる独自の論理に基づいており、その本質は「友と敵」の区別とそれに伴う生存闘争にあると主張しました。
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現代社会への示唆
シュミットの「政治的なものの概念」は、現代社会においても重要な示唆を与えます。グローバリゼーションの進展により、国家間の境界が曖昧になり、経済的な相互依存が深まる一方で、民族主義や宗教対立といった対立も顕在化しています。
このような状況下では、政治の問題を経済や道徳の論理だけで解決しようとすると、現実の複雑さを捉えきれず、かえって対立を激化させる可能性があります。
シュミットの議論は、現代社会における政治の重要性を再認識させ、政治の自律性と「友と敵」の区別の論理を直視することの必要性を訴えかけるものとして、今日でも多くの論者を惹きつけています。