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シュミットの憲法理論の批評

## シュミットの憲法理論の批評

ワイマール憲法体制への批判と立憲主義の軽視

シュミットは、ワイマール憲法体制の混迷を目の当たりにし、その原因をリベラリズム的な議会制民主主義や妥協を重視する政治過程に求めた。彼は、こうしたシステムが政治的な決断を遅らせ、ナチスのような非妥協的な勢力の台頭を許したと考えた。そして、この経験から、政治における「決断」の重要性を強調し、その役割を担う主権者の存在を説いた。

「例外状態」の概念と権力の濫用の可能性

シュミットの理論で最も議論を呼ぶのは、「例外状態」の概念である。彼は、国家の存立が脅かされるような非常事態においては、憲法の規定を一時的に停止し、主権者が独断で決断を下すことが正当化されると主張した。しかし、この「例外状態」の判断基準は曖昧であり、権力者が恣意的に「例外状態」を宣言し、独裁的な権力を掌握する危険性を孕んでいるという批判は根強い。

民主主義の形式的な理解と実質的な軽視

シュミットは、民主主義を単に多数決の原理として捉え、その実質的な内容には関心を示さなかった。彼は、民主主義の根底にあるべき自由や平等、人権といった価値を軽視し、それらを「政治的な」決定によって左右される相対的なものと見なした。そのため、彼の理論は、民主主義の形式的な側面のみを強調し、その本質である市民の自由と権利をないがしろにする危険性をはらんでいるという批判がある。

国民の同質性を前提とした排他的な国民国家論

シュミットは、政治的な統一のためには国民の同質性が必要不可欠であると考えた。そして、異なる価値観や利害を持つ集団の存在は、政治的な対立を招き、国家の統合を阻害すると主張した。この考え方は、排他的な国民国家論に繋がりやすく、移民や少数民族に対する差別を正当化する根拠として利用される危険性を孕んでいるという指摘もある。

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