## シュペングラーの西洋の没落の関連著作
**トインビー「歴史の研究」**
シュペングラーの「西洋の没落」と並び称される文明論の古典。シュペングラーが「文化」と「文明」を対比的に捉え、西洋文明の衰退を論じたのに対し、トインビーはより広範な視野から、世界史上に興亡した21の文明を比較研究し、文明の発生・成長・衰退・崩壊の過程を独自の理論で説明しました。
トインビーは、文明の成長を「挑戦と応戦」という概念を用いて説明します。彼によれば、文明は周囲の環境からの挑戦に対し、創造的なエリート層を生み出すことで応戦し、成長していきます。しかし、その挑戦が困難すぎたり、エリート層が硬直化したりすると、文明は衰退に向かうとしました。
シュペングラーとトインビーは、文明には寿命があり、永遠ではないという点で共通しています。しかし、シュペングラーが西洋文明の必然的な没落を論じたのに対し、トインビーは文明の衰退を克服し、再生する可能性も示唆している点が異なります。
**ヤスパース「歴史の起源と目標」**
ドイツの哲学者ヤスパースは、紀元前8世紀から紀元前3世紀にかけて、世界各地で同時多発的に現れた「枢軸時代」の概念を提唱しました。この時代、ゾロアスター、仏陀、孔子、ソクラテスといった思想家たちが登場し、人類の精神史に大きな転換をもたらしました。
ヤスパースは、シュペングラーが西洋文明の起源と位置づけたギリシャ文化を、この枢軸時代の一部として捉え直しました。そして、枢軸時代以降、人類は共通の歴史を歩み始めたとし、西洋文明のみを特別視することに疑問を呈しました。
シュペングラーが西洋文明の没落を論じたのに対し、ヤスパースは、枢軸時代の精神を現代に受け継ぎ、新たな時代を切り開くことの重要性を説いています。
**アロイス・リーゲル「後期ローマ美術産業」**
美術史家アロイス・リーゲルは、古代ローマ美術の様式変遷を分析し、後期ローマ美術に見られる装飾性や抽象性を、衰退の兆候としてではなく、独自の芸術様式として評価しました。
リーゲルの研究は、シュペングラーが「文明」の段階における芸術の特徴として挙げた、装飾性や抽象性が、必ずしも衰退を意味するものではないことを示唆しています。
シュペングラーは文明を生物にたとえ、誕生、成長、衰退、死というライフサイクルをたどると考えましたが、リーゲルの研究は、歴史や文化の解釈において、多様な視点が存在することを示しています。