## シュペングラーの西洋の没落の評価
オズワルド・シュペングラーの著した『西洋の没落』は、1918 年の第一次世界大戦終結直後に出版されて以来、絶賛と酷評の両方を浴びてきた問題作です。
歴史、哲学、文化批評を織り交ぜたその壮大なスケールと、西洋文明の衰退を予言する内容は、当時の知識人社会に大きな衝撃を与えました。出版から 100 年以上が経過した現在でも、本書は多くの議論を巻き起こし、その評価は賛否両論に分かれています。
本書に対する評価は、主に以下の3つの観点から分析することができます。
1. 歴史観
シュペングラーは、従来の歴史観とは異なる独自の文明史観を展開しました。彼は、世界史を一元的・直線的に捉えるのではなく、それぞれ独自の「文化」を持つ複数の文明が、誕生、成長、衰退、滅亡という生命サイクルを繰り返すと主張しました。 この「文化形態史観」は、それまでの歴史観に一石を投じ、多くの歴史家や思想家に影響を与えました。しかし、その一方で、歴史を生物のように捉えるあまり、歴史の複雑さや多様性を捨象しているという批判も根強くあります。
2. 西洋文明論
シュペングラーは、西洋文明を「ファウスト的文化」と呼び、その特徴として無限の進歩を追求する精神や理性主義、技術至上主義などを挙げました。そして、古代ギリシャやローマなどの過去の文明と同様に、西洋文明もまた、やがて衰退し滅亡する運命にあると断言しました。 彼の西洋文明に対する悲観的な見方は、第一次世界大戦後の厭世的な風潮と共鳴し、大きな反響を呼びました。しかし、その一方で、西洋文明を一面的に捉えすぎているという批判や、単なる文化悲観論に過ぎないという批判も少なくありません。
3. 影響
『西洋の没落』は、歴史学、哲学、政治学など、様々な分野に大きな影響を与えました。特に、ナチスなどの全体主義運動に利用されたことは、本書の評価を大きく左右する要因の一つとなっています。 しかし、シュペングラー自身はナチスを支持しておらず、彼の思想がナチスに利用されたことは、彼の真意とは異なるものであったという指摘もあります。
このように、『西洋の没落』は、その壮大なスケールと挑発的な内容ゆえに、出版以来、常に賛否両論の渦中にあります。
本書に対する評価は、読者の歴史観や思想的立場によって大きく異なるため、一概に断定することはできません。