## シュペングラーの西洋の没落の思想的背景
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ドイツ的悲観主義の影響
シュペングラーの思想には、ショーペンハウアーやニーチェに代表される19世紀ドイツの「生の哲学」の影響が色濃く見られます。ショーペンハウアーは、世界は意志の盲目的な衝動に突き動かされており、理性や進歩は幻想に過ぎないと説きました。ニーチェもまた、西洋文明はニヒリズムに陥っていると批判し、理性や道徳などの伝統的な価値観を乗り越える必要性を訴えました。
シュペングラーは、このようなドイツ的悲観主義の系譜に立ちながら、西洋文明を「没落」という生物学的、有機体的な観点から捉え直しました。彼は、文化もまた生物と同じように誕生、成長、衰退、死というライフサイクルを持つとし、西洋文明はもはや避けられない没落期に突入したと主張しました。
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ヘーゲルの歴史哲学との対峙
シュペングラーは、ヘーゲルが提唱した歴史の進歩という概念を批判しました。ヘーゲルは、歴史は理性によって進歩していくものであり、その最終目標は自由の実現にあると考えました。
一方、シュペングラーは、歴史には普遍的な法則や目的は存在せず、それぞれの文化は独自の価値観や運命を持つと主張しました。彼は、ヘーゲル的な歴史観を、西洋中心主義的で、他の文化を軽視していると批判しました。
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ゲーテの形態学の影響
シュペングラーは、ゲーテの自然科学的方法、特に形態学から大きな影響を受けました。ゲーテは、自然界の多様性を、共通の原型から派生した変形として理解しようとしました。
シュペングラーは、このゲーテの形態学を歴史に応用し、異なる文化を比較研究しました。彼は、文化もまた独自の「魂」を持ち、それぞれが固有の形態で発展すると考えました。