## シャーマンの革新の政治経済学の普遍性
シャーマンの革新の政治経済学における普遍性の概念
政治経済学者マンサー・オルソンは、著書「国家興亡論」の中で、安定した社会においては、経済活動を阻害するような「分配連合」が形成され、長期的な経済成長を阻害すると主張しました。しかし、オルソンは、戦争や革命といった社会を根底から覆すような出来事が、こうした硬直化した構造を破壊し、新たな成長を促す可能性を指摘しました。
シャーマンのオルソン批判と普遍性への着目
オルソンの後継者と目されることもあるバリー・R・シャーマンは、著書「革新の政治経済学」の中で、オルソンの議論を批判的に継承しつつ発展させました。シャーマンは、オルソンの理論が、特定の歴史的文脈、特に西ヨーロッパの封建制の崩壊と近代国家の形成という文脈に強く依拠していることを指摘しました。
シャーマンは、オルソンの議論をより普遍的なものへと拡張するため、近代国家成立以前の社会、あるいは西ヨーロッパ以外の地域における社会変革と経済成長の関係に目を向けました。彼は、古代ローマや中国といった国家においても、長期的な安定が硬直化を生み出し、それが外部からの衝撃や内部からの改革によって打破されることで、新たな成長サイクルが開始されたことを具体的な事例を挙げて論じています。
普遍性を裏付ける歴史的事例研究
シャーマンは、著書の中で、古代ローマ、中国、オスマン帝国、日本の歴史を分析し、オルソン的な硬直化と革新のダイナミズムが、異なる時代、異なる地域においても観察されることを示しました。
例えば、古代ローマにおいては、共和政ローマの成功が、土地所有の集中と政治的寡頭制をもたらし、これが経済の停滞と社会不安の一因となりました。しかし、ローマ帝国の成立とそれに伴う領土の拡大は、新たな経済的機会と社会移動をもたらし、ローマは再び繁栄を取り戻しました。
また、中国においても、長期的な王朝支配が、官僚制の腐敗と経済の停滞を生み出す一方で、王朝交代は、しばしば土地改革や新たな技術革新を伴い、経済成長を促進する効果をもたらしました。
普遍性に関するシャーマン自身の見解
シャーマン自身は、自らの理論が、あらゆる歴史的事例に当てはまる普遍的な法則であるとは主張していません。彼は、歴史の複雑さを踏まえ、特定の理論モデルで歴史を完全に説明することの難しさを認識していました。
しかし、シャーマンは、自らの研究が、オルソンの理論をより普遍的な文脈で捉え直すための重要な一歩となると考えていました。彼は、硬直化と革新というダイナミズムが、歴史を通して繰り返し現れるパターンであることを示唆し、今後の歴史研究や経済発展論に新たな視点を提供しました。