## シェーラーの宇宙における人間の位置
### シェーラーの思想における「人間」の位置づけ
シェーラーは、人間を「宇宙における位置」という観点から考察しました。彼は、人間を単なる生物学的な存在としてではなく、世界に開かれた精神的な存在として捉えました。シェーラーによれば、人間は、動物とは異なり、世界を客観的に認識し、自己を世界から切り離して意識することができます。
### 「世界開放性」という概念
シェーラーは、人間の精神の特性を「世界開放性」という言葉で表現しました。世界開放性とは、世界に対して開かれ、世界と自由に関係を持つことができる人間の精神の能力を指します。動物は、本能や環境によって限定された世界に生きていますが、人間は、世界を客観的に認識し、世界と多様な関係を築くことができます。
### 「精神」と「生命」の対比における人間の位置
シェーラーは、「精神」と「生命」を対比させて、人間の位置を明らかにしようとしました。「生命」は、自己保存と種の維持を目的とする衝動に突き動かされるのに対し、「精神」は、世界を客観的に認識し、価値を創造する能力を持っています。シェーラーによれば、人間は、「精神」と「生命」の両方を持ち合わせた存在です。人間は、生物としての側面を持つ一方で、世界を開き、精神的な活動を展開することができます。
### 人間の「中心性」と「相対性」
シェーラーは、人間が宇宙の中心に位置づけられると考えたわけではありません。彼は、コペルニクスやダーウィンによって示されたように、人間中心的な世界観は克服されるべきだと考えていました。しかし、シェーラーは、人間が世界において特別な位置を占めていることも認めています。人間は、世界開放性を持つがゆえに、世界を全体として把握し、世界の価値を評価することができるからです。
### シェーラーの思想における「宇宙」の捉え方
シェーラーは、「宇宙」を単なる物理的な空間としてではなく、人間の精神によって意味づけられた世界として捉えました。シェーラーにとって、宇宙は、人間が自己を認識し、価値を創造していく場となります。彼は、人間が世界とのかかわりの中で自己を形成し、世界に意味を与えていくと考えていました。