## シェイクスピアのマクベスから学ぶ時代性
マクベスの時代背景とシェイクスピアの意図
「マクベス」は、11世紀のスコットランドを舞台に、実在したスコットランド王マクベスをモデルに描かれたシェイクスピアの四大悲劇の一つです。 作品が書かれた17世紀初頭のイングランドは、エリザベス１世の死後、新たな王ジェームズ１世が即位した時代でした。ジェームズ１世はスコットランド王ジェームズ６世でもあり、スコットランドとイングランドの統一を果たした人物です。
シェイクスピアは、ジェームズ１世の祖先とされるバンクォーを劇中に登場させ、彼の子孫が王位を継承することを予言するなど、王への配慮を作品に込めています。同時に、マクベス夫妻の野望と破滅を通して、王の暗殺や権力争いといった当時の社会不安を反映させてもいるのです。
「マクベス」に描かれた当時の社会と価値観
「マクベス」には、当時の社会状況や人々の価値観を反映した要素が数多く見られます。例えば、魔女の存在は、当時の社会における迷信や超自然的な力への畏怖を表していると考えられます。また、マクベスが王位に就く過程で見せる迷いや罪悪感は、王権神授説に基づく、王権の絶対性に対する当時の認識を反映していると言えるでしょう。
さらに、マクベス夫人が夫を唆し、共に悪事に手を染めていく姿は、当時のジェンダー観や女性に対する社会的なイメージを浮き彫りにしています。夫を操り、野心を露わにするマクベス夫人の姿は、当時の男性中心社会における女性の抑圧や、そこから解放されようとする潜在的な欲求を象徴しているとも言えるでしょう。
現代社会への問い
「マクベス」は、400年以上も前に書かれた作品でありながら、人間の欲望や罪の意識、権力への渇望といった普遍的なテーマを描いているが故に、現代社会においても色褪せることなく、私たちに多くの問いを投げかけています。
権力や欲望に目がくらんだ時、人間はどのように行動してしまうのか。「マクベス」は、私たち自身の中にも潜む闇の部分を浮き彫りにし、道徳や倫理観について深く考えさせる作品と言えるでしょう。